呼吸器の病気のリスト

多くの呼吸器の病気では共通して、咳や痰、呼吸困難、胸痛、呼吸をする度に「ゼーゼー、ヒューヒュー」と音がする喘鳴などの症状がみられます。
呼吸器の病気の診断には、胸部X線検査、肺機能検査、喀痰検査や血液検査が必要になります。呼吸器の症状が長く続く場合は、呼吸器科を受診しましょう。

異常があったら呼吸器科へ
  • 肺がん…気管、気管支、肺胞の細胞ががん細胞となり、無秩序に増えて発生します。
  • 肺結核…結核菌による呼吸器の伝染性疾患で、現在でも高齢者には少なくありません。
  • 無気肺…肺全体または一部の空気が極端に減少したりする状態をいいます。
  • 肺気腫…正常な肺胞が減少し、呼吸面積が減少するため、ガス交換に不都合が生じます。
  • 肺水腫…血液中の水分が血管外に漏れ出して、肺胞の中にたまった状態です。
  • 気管支喘息…咳と痰が出て、呼吸困難におちいり、呼吸のたびにゼーゼーと音がします。
  • 急性気管支炎…気管支の粘膜に炎症が起こる病気で、ウイルス感染によるもの大半です。
  • 慢性気管支炎…1年のうち3ヶ月以上、毎日、咳や痰が続く状態です。
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)…肺気腫と慢性気管支炎を合わせてこう呼ばれます。
  • 肺線維症…肺が硬くなって縮小するため、ガス交換が不十分になって呼吸不全になります。
  • 間質性肺炎…肺胞の壁の間質が結合した組織に炎症が起こる病気です。
  • 過敏性肺炎…カビやほこりなどを吸い込んで引き起こされる、アレルギー性の肺炎です。
  • 気管支拡張症…気管支の一部が拡張し、分泌液が溜まって、炎症を起こす病気です。
  • 自然気胸…外側の臓側胸膜が破れて、肺の中の空気が胸膜腔に流れ込む病気です。
  • 呼吸不全…血液中の酸素量が減少し、十分な量を臓器に送れなくなった状態です。
  • 胸膜炎…肺の表面を覆っている胸膜が炎症が起こす病気です。
  • 過換気症候群…呼吸のしすぎで血液中の二酸化炭素が過度に減少する病気です。
  • 睡眠時無呼吸症候群…睡眠中に頻繁に呼吸が止まり、そのたびに目が覚めます。
  • 肺動脈血栓塞栓症…肺動脈に、血栓や脂肪、腫瘍細胞のかたまりが詰まった状態です。

気管支喘息とは?

激しい咳と痰が出て、呼吸困難におちいり、呼吸のたびにゼーゼーと音を立てる発作を起こす病気で、一般に「ぜんそく」と呼ばれています。発作は何時間かたつと自然におさまります。
原因ははっきりとわかっていませんが、何らかの刺激に対して、気道が過敏に反応し、気管支の筋肉が収縮して、気道が狭くなってしまうため、息苦しくなるものです。

気管支ぜんそくについて

気管支喘息にはアトピー型(アレルギー型)と非アトピー型(非アレルギー型)があります。前者は原因となる物質(アレルゲン)が特定されているタイプで子供に多くみられ、後者は発作を誘発する刺激物質が特定できていないタイプで成人に多くみられます。
主なアレルゲンは、ちりやほこり、ダニ、植物の花粉、ペットの毛やたばこの煙などです。

気管支喘息の症状
気管支喘息の発作は、何の前触れもなく突然起こります。多くの人は夜中から明け方にかけて発症します。最初は、のどや胸が詰まる感じがして目が覚めます。やがてのどが鳴って喘息がおき、呼吸が苦しくなります。

さらに呼吸困難がひどくなると、起き上がって座り込まなければ呼吸できない状態になり、咳や痰が出てきます。発作がおさまってくると咳も軽くなり、痰の粘り気も少なくなって呼吸困難も収まります。

気管支喘息の治療
根本的に治療する方法はなく、長期的に病気と付き合っていかなければなりません。できるだけ発作を起こさないように、予防と自己管理に努めることが大切です。

まず、アトピー型で刺激物質(アレルゲン)が特定されている場合は、それを避けることが第一です。非アトピー型の場合でも、たばこの煙やほこり、ペットの毛、植物の花粉などはできるだけ避けるようにします。

発作を繰り返す人は、慢性的な起動の炎症がみられます。この炎症を抑えるためには、長期的に吸入ステロイド薬を常用すると効果があり、発作の予防につながります。
発作に対しては、気管支拡張薬が有効です。発作が激しく、呼吸困難で苦しんでいるときは、医療機関で速やかな治療が必要です。

これらの治療で通常は2週間〜1ヶ月以内に治りますが、ときには肺炎を合併したり、化膿性炎症などに進行する場合もあります。

急性気管支炎とは?

気管支の粘膜に炎症が起こる病気で、ウイルスの感染によるものがほとんどです。原因となるウイルスはかぜ症候群と同じ、ライノウイルスやパラインフルエンザウイルスです。
ウイルス以外にも、微生物のマイコプラズマや最近が原因となることもあります。

咳と発熱が主症状です

急性気管支炎の症状
はじめはかぜの症状と同じように、くしゃみや頭痛、悪寒、倦怠感、鼻水、鼻づまり、のどがれなどの症状が出ますが、とくに、空咳が出るのが特徴です。しだいに痰が出はじめると気管支やのどにからまって息をするのが苦しくなりヒューヒューというかすれた音が出はじめます。

熱は、ふつう肺炎より高くなることはありませんが、それでも39度前後の高熱が、数日続くことがあります。こういう症状が続くと炎症が肺胞におよび、肺炎の危険があるため、要注意です。
咳や痰は長引くことがありますが、だいたい2〜4週間で治ってきます。

急性気管支炎の治療
現在では有効な抗ウイルス剤がありませんので、解熱剤や去痰剤、鎮咳剤などを用いる対症療法が中心となります。乾いた咳のあとに痰が出始めたときに鎮咳剤を用い、ネブライザー(薬剤をエアゾル状にする機器)による吸入で気道を加湿します。

これらの治療で通常は2週間〜1ヶ月以内に治りますが、ときには肺炎を合併したり、化膿性炎症などに進行する場合もあります。

慢性気管支炎とは?

痰をともなう咳が6ヶ月以上持続して、気管支拡張症気管支喘息では説明ができないような場合は、慢性気管支炎を考えます。専門的には「1年のうち3ヶ月以上、毎日、咳や痰が続き、これらが少なくとも2年以上続く状態」をいいます。

慢性気管支炎の画像です

発症の直接の原因は不明ですが、長期にわたる喫煙習慣がかかわっています。
絶えずたばこの刺激を受けることで気管支内の粘膜から粘液や分泌物が過剰に放出され、痰が増えると考えられています。また、慢性的な副鼻腔炎(蓄膿症)と合併するケースが多いことがわかっています。

慢性気管支炎の症状
せきには痰をともなう湿性せきと、痰をともなわない乾性せきがあります。慢性気管支炎は湿性せきをともなうのが特徴です。最初は、朝起きてたばこなどを吸うと粘り気のある痰が出ますが、だんだん症状が重くなってくると、痰の量が増えて粘っこくなり、1日中痰をともなう咳が出るようになり、痰の量は1日10ml以上となります。

さらに急性気管支炎を併発すると、痰が黄色に色づいて膿のようになります。こうなると発熱や呼吸困難などの症状もみられ、痰に血が混じる血痰が出ることもあります。ここまで進行すると階段の上り下りや、重いものを持っただけで息切れや呼吸困難がみられるようになり、ひどいときにはチアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になる)がみられることもあります。

慢性気管支炎の治療
喫煙習慣のある人は、たばこをやめることが絶対です。痰の症状は去痰薬、息切れには気管支拡張薬が有効です。病気がある程度進行してしまうと完治は期待できません。
風邪をひいたりすると重症化しやすいので、予防に努めることも大切です。

また、晩秋から冬季にかけて悪化しやすいので、保温と保湿に十分気をつけましょう。この時期は室内でのガスストーブの使用は控えてください。

関連疾患:急性気管支炎とは?

慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは?

肺を構成する肺胞がつぎつぎ破壊され酸素と二酸化炭素のガス交換がスムーズに行かなくなる病気を肺気腫といいます。慢性気管支炎を合併することが多く、空気が通りにくくなります。
この二つを合わせ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)という病名で呼ばれることが多くなりました。
長年にわたる喫煙が主な原因ですが、家族や仕事場の誰がヘビースモーカーの場合は、非喫煙者でも高リスクとなります。喫煙以外にも、大気汚染や化学物質も刺激になります。

COPDの胸部X線画像です

患者数は多く、40歳以上の8.5%にあたる530万人と推定されています。しかし、実際に治療を受けているのはその5%にも達しておらず、病気が十分に認識されていないのが現状です。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症状
風邪でもないのにしつこい咳や痰が毎日出たり、階段を上がるなど、少しの動作で息切れを感じるようになります。進行すると、食事や着替えの動作でも息苦しくなります。
肺胞でのガス交換が十分に行なわれないために、酸素が少なく、二酸化炭素の多い血液が全身をめぐり、唇や爪が紫色になるチアノーゼがみられます。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療
症状の程度によって治療法も異なりますが、いずれも禁煙することから治療が始まります。気道の閉塞が軽度のうちに禁煙できれば、咳や痰の症状は改善され、息切れの悪化も遅らせることができます。

中等度の場合は、呼吸を楽にするための薬物療法(抗コリン薬、メチルキサンチンなどの気管支拡張薬の吸入、去痰薬の服用)、呼吸機能の低下がみられる場合は、現在の呼吸機能を効率的に生かすための訓練(呼吸リハビリテーション)が行われます。

呼吸不全になると酸素吸入が必要になりますが、この場合は在宅酸素療法といって、小型の酸素吸入の装置を用いることによって家庭でも行なえます。一日の酸素の吸入量を守ることが大切で、体重、体温、酸素吸入量などを記録しながら行ないます。

肺炎やインフルエンザにかかると、慢性閉塞性肺疾患は著しく悪化しますので、肺炎球菌ワクチンを5年間のサイクルで、またインフルエンザワクチンを毎年接種するとよいでしょう。

気管支拡張症とは?

気管支の一部が拡張し、そこに分泌液が溜まって、炎症を起こす病気です。
拡張した部分の浄化能力は低下し、血管も増殖するため、膿性の痰が現れます。
気管支拡張症の原因には、生まれつきの異常、幼少時にかかった肺炎やはしか、百日咳などの後遺症、副鼻腔気管支症候群から進行するものなどがあります。

胸部エックス線の画像です

気管支拡張症の症状
長期間持続する咳、痰が主な症状となりますが、夜間に痰が溜まり、朝起きると赤兎ともに痰が出てくるのが特徴です。
細菌の感染をともなう場合には発熱とともに痰は膿性となり、血痰や喀血をともなうこともあります。重症になると全身衰弱や呼吸困難をきたすこともあります。

気管支拡張症の治療
残念ながら、拡張した気管支は元には戻りません。しかし、成人期以降はほとんど進行しないので、おもに内科的治療を行ない、去痰薬を使って細菌感染のもとになる痰を毎日出すようにします。
原因となる病原体は喀痰検査でわかりますので、はっきりしたら抗生物質の投与を行ないます。

痰を出しやすくするためには、傾斜をつけたベッドなどに仰向けに寝て、頭より脚を高い位置に保つ姿勢を取る方法(ドレナージ)が有効で、これを一日数回、20〜60分行ないます。また、胸部を軽く叩き、振動を与えて痰を出しやすくする胸部叩打法などの理学療法も行ないます。

自然気胸とは?

肺の外側を覆っている臓側胸膜という膜は、肺がおさまっている胸郭(肋骨)の内側を覆っていて、壁側胸膜と呼びます。これらの膜を胸膜、膜と膜の隙間を胸膜腔といいます。
この肺の外側の臓側胸膜が破れて、肺の中の空気が胸膜腔に流れ込む病気が自然気胸です。

左の肺がしぼんでしまっています

多くは肺の中にできる気腫性嚢胞(ブラ)が破裂して、孔(あな)があくことで生じます。
痩せ型の若い男性に多くみられますが、中高齢者で肺気腫や慢性閉塞性肺疾患を持った人にも発症します。

自然気胸の症状
胸痛、咳、呼吸困難が特徴的症状とされていますが、なかでも胸痛は必ず起こります。
呼吸困難はしぼんだ肺の程度によってまちまちで、片肺が完全にしぼむと急激な呼吸困難がみられますが、反対側の肺が健全ならば、代償によって呼吸困難はだんだんおさまります。

自然気胸の治療
破れてできた孔が小さい場合は、安静にしていれば自然に軽快することもあります。
通常は、肺から漏れた空気を抜く治療(脱気療法や胸腔ドレナージ)が用いられます。
空気の漏れが泊まらない場合や再発を繰り返すときは、胸腔鏡という内視鏡を使って、嚢胞を縫縮したり切除する手術が行われます。

過換気症候群とは?

疲労、不安、恐怖、怒りなどの精神的な緊張があると、無意識に過呼吸(呼吸のしすぎ)となり血液中の炭酸ガス濃度が低下し、血液がアルカリ性になり、発作が起こります。別名、過呼吸症候群ともいい、若い女性に多くみられる心身症です。

心因性の場合はカウンセリングも必要です

過換気症候群の症状
まず不安感や息苦しさ、動悸、めまいなどを感じ、急に息遣いが荒くなって「ハーハー」と方で息をしたり、手足の痺れやこわばり、頭痛、吐き気、ふらつき、耳鳴りなどの諸症状が現れます。
さらにひどいときにはけいれんや意識障害を起こすこともあります。発作は30分〜1時間ぐらいでおさまります。しかし、発作がないときでも肩こりやめまい、手足の冷え感などを感じることが多いです。

過換気症候群の治療
患者の多くは、息苦しさからさらに呼吸をしようとして悪循環に陥ります。
まずは、息をゆっくり浅くするようにし、小さめの空のビニール袋などを口と鼻にあてがって、吐いた息を再び吸うようにします(ペーパーバック療法)。つまり、自分が吐いた二酸化炭素を再び吸い込んで、酸素の吸入量を抑えることで呼吸が楽になってきます。

ただ、心因性の場合が多いので医師に悩みを打ち明けてよく相談し、指導を受けることも大切です。不安が強い場合は、抗不安薬などを服用することもあります。

睡眠時無呼吸症候群とは?

睡眠時無呼吸症候群とは、一晩の睡眠中に10秒間以上の無呼吸状態が30回以上起こるか、睡眠1時間中に無呼吸数あるいは低呼吸数が5回以上起こる場合をいいます。とくに肥満の男性に多く、大きないびきをかくのが特徴です。

日中に強い眠気を引き起こします

肥満や耳鼻科の病気によって、睡眠中にのどが詰まってしまう閉塞型と、老人などで呼吸中枢のはたらきが低下するために呼吸が止まる中枢形、これらの混合型に分けられます。
このうち、肥満によって閉塞性無呼吸を起こすものをピックウィック症候群といいます。

睡眠時無呼吸症候群の症状
睡眠中に頻繁に呼吸が止まり、そのたびに目が覚めるので、不眠となります。そのため日中に強い眠気を訴えることがあります。また、呼吸停止が多くなると、高血圧や心臓肥大などの重大な症状を起こします。

睡眠時無呼吸症候群の診断
診断の確定には、「呼吸状態」と「睡眠状態」を調べる睡眠ポリグラフ検査が必要となります。
鼻と口の気流、気管音などの測定に加えて、体位センサーや胸部バンド、腹部バンドという帯状のセンサーをつけ、寝ているときの姿勢、胸やおなかの運動を調べ、呼吸状態を検査します。

また、心電図や脳波、眼球運動、筋電図によって、眠りの深さや質を調べます。
足の筋肉の動きを測定する下肢筋電図では、足の関節やひざの間などのムズムズした感覚で睡眠が妨げられる「ムズムズ足症候群」などの可能性を探ります。

睡眠時無呼吸症候群の治療
原因となった肥満や耳鼻科の病気の治療が第一です。また、呼吸を補助する装置を使うこともあります。例えば、症状が軽い場合は、口にはめ込むと気道が広がる仕組みのマウスピースを就寝時に装着し、気道の通りをよくします。また、重症の場合は、頭に固定するタイプの鼻マスクを用いて、人工呼吸を施します。

不眠だからといって睡眠薬を使ってはいけません。睡眠薬の呼吸抑制作用や筋弛緩作用によってさらに症状が悪化する恐れがあります。

無気肺とは?

無気肺とは、気管支や肺がさまざまな原因で閉塞したり圧迫されたりして、肺全体または一部の空気が極端に減少したり、全く空気が入っていない部分ができる状態をいいます。
気管支の場合は、気管支の内腔が異物や腫瘍、炎症、あるいは痰などの分泌物によって閉塞することにより、それより先の肺胞などに空気が入らなくなります。

無気肺

また、肺線維症や放射線肺臓炎、あるいは肺水腫や自然気胸で肺が行動に収縮したときにも発症します。そのほかの原因では、胸膜炎、心臓肥大、大動脈瘤など、肺が圧迫されて起こるものなどがあります。

無気肺の症状
咳と痰は共通の症状ですが、原因や病気の程度によって、現れる症状は異なってきます。
閉塞部分が広範囲で急激な場合は胸部圧迫感、胸痛、呼吸困難などが現れます。重症の場合は、ショックで生命が危険になることもあります。
逆に閉塞部分が狭くて発症が緩やかな場合は無症状のこともあります。また、症状が出ても咳や痰が中心で、呼吸困難や共通などはない場合が多いです。

無気肺の診断
胸部X線検査、胸部CT検査によって無気肺となった部位の診断が可能です。気管支内視鏡によって気道内の病変の様子を評価します。

無気肺の治療
原因となっている病気がある場合は、その治療を行ない、気管支をふさいでいる異物や痰があればそれを取り除きます。向き肺が慢性化している場合は、肺炎などを起こしやすいため、抗菌薬を服用します。

呼吸不全とは?

呼吸不全とは、原因となるさまざまな疾患のために呼吸器能が低下した結果、血液中の酸素量が著しく減少し、十分な酸素を臓器に送れなくなった状態のことをいい、慢性と急性に分けられます。

胸部X線写真

慢性呼吸不全
原因となる疾患には、肺結核肺気腫慢性気管支炎などがあげられます。このような病気が緩やかに進行し、呼吸不全におちいります。
症状としては、運動時の息切れや咳、痰、喀血、喘鳴などに加えて、むくみが生じたり、場合によっては意識障害におちいる場合もあります。
治療は症状に応じて、気管支拡張薬、去痰薬、鎮咳薬、副腎皮質ステロイド薬を用います。
重症者の場合は、在宅酸素療法(家庭での継続的な酸素吸入療法)が治療の基本となります。

急性呼吸不全
呼吸不全の状態が急激に起こるもので、呼吸困難やチアノーゼ、意識障害などが現れます。
原因としては、重症の肺炎や間質性肺炎、気管支喘息の発作などで呼吸中枢をつかさどる神経機能が低下した場合や、ギラン・バレー症候群重症筋無力症などで神経の働きや筋肉の動きがコントロールできなくなった場合などがあげられます。

急性呼吸不全になった場合は生命の危険があるので、まず酸素吸入などの救急処置が優先され、その後、原因となっている病気に応じて必要な治療が行われます。

呼吸不全の診断
胸部X線写真、動脈血ガス分析などを行なって、肺病変の性質やその広がり、重症度を調べ、さらに呼吸不全を起こしている原因疾患を調べるために心電図(心臓疾患との区別)、細菌培養検査、腹部X線検査・腹部超音波検査(腹部臓器における疾患との区別)などを行い、その検査結果をもとに総合的に診断を下します。

過敏性肺炎とは?

カビやほこりなどを吸い込んで引き起こされる、アレルギー性の肺炎です。
ジメジメした梅雨の時期に増殖するトリコスポロンというカビが病原体となる「夏型過敏性肺炎」、牛の飼料にする牧草に生えるカビが原因となる「農夫肺」、エアコンや加湿器のフィルターに繁殖したカビによる「空調病・加湿器病」、鳥のフンが乾燥して粉末状に成ったものを吸い込んで起こる「鳥飼病」など、様々なタイプに分類されますが、「夏型〜」が一番多く、全体の75%を占めています。

いずれも症状は共通しており、咳や呼吸困難、発熱、全身倦怠感、体重減少などが現れ、重症化すると血痰や動悸などがみられることもあります。

治療の基本は原因となる病原物質の隔離と除去となります、重症例には副腎皮質ホルモン(ステロイド)薬などの薬物療法が有効となります。ただし、病状が治まっても、再び原因物質に接触すれば、さらに深刻な症状を引き起こし、肺線維症を誘発して呼吸不全になることもあります。再発の予防には、空調などの徹底した清掃が必要です。

間質性肺炎とは?

肺に送られてきた酸素と血液中の二酸化炭素を交換する肺胞の壁を間質といいます。肺胞に炎症を起こす病気が肺炎であるのに対し、肺胞の壁の間質が結合した組織に炎症が起こるのが間質性肺炎です。発生年齢は、50〜60歳代に集中しています。

胸部エックス線写真で見る病変部

原因は多岐にわたりますが、代表的なものとして、マイコプラズマやウイルスによる感染、膠原病の合併症、放射線治療の副作用、アスベストの影響などがあげられます。そのほか原因のわからない突発性間質性肺炎もあります。

間質性肺炎の症状
痰を伴わない乾いた咳が出て、息苦しさを覚えます。微熱があり、からだがだるくなります。慢性化すると、細菌性の肺炎を伴うことがあり、その場合は痰がからむようになります。
また、皮膚に膨らみがあらわれたり、心臓肥大をもたらす肺性心を合併することもあります。

間質性肺炎の診断と治療
聴診や胸部エックス線検査、呼吸機能検査、血液検査、気管支鏡検査、肺生検などにより検査します。治療には副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤を使用します。呼吸不全に陥っても、病状が安定していれば、在宅酸素療法が可能です。

肺線維症とは?

肺組織が長期にわたって傷害され、線維化してしまう状態です。原因となる病気には、間質性肺炎過敏性肺炎サルコイドーシス、膠原病、塵肺など、数多くのものが考えられます。

重症例では改善が見込めず、予後はよくありません

肺線維症の症状
肺が硬くなって縮小するため、ガス交換が不十分になって頻繁に息切れするようになります。また、ちょっとしたことで疲れやすくなったり、乾いた咳が出ます。症状が進行すると、呼吸困難やチアノーゼ(酸素不足により、皮膚の色が青紫色になる状態)がみられるようになります。

肺線維症の治療
症状が軽い場合は治療の必要はありません。症状が悪化して呼吸不全などが起こったときは、酸素吸入や人工呼吸器による呼吸管理を行います。また、副腎皮質ステロイド薬の大量服用によって、症状緩和が期待できることもあります。痰の状態によっては抗生物質も用いられます。

肺動脈血栓塞栓症とは?

心臓から血液を肺に送り届ける肺動脈に、血液のかたまり(血栓)や脂肪、腫瘍細胞のかたまり(塞栓)が詰まった状態を肺動脈血栓塞栓症といい、その結果、血流が滞って肺組織が壊死していく状態を肺梗塞といいます。

長時間のフライトは要注意です

急に呼吸困難になり、胸に不快な感じがして、咳が出ることもあります。
さらに脈が速くなったり不整脈が起こり、血痰あるいは発熱、発汗、チアノーゼ(皮膚や粘膜が暗青色または暗藍色になること)をともなうこともあります。

肺動脈血栓塞栓症の原因
脚の静脈にできた血栓が肺に運ばれて発症するケースが最も多くみられます。
長時間動かずにいることと脱水が重なって、脚の静脈の血流が滞り、血栓ができてしまうものです。
一般的には、飛行機内で長時間着席したままでいるために起こる、エコノミークラス症候群として知られています。
足を動かさない状態から急に立ち上がったとき、血栓がはがれて血流に乗り、肺まで到達して、血管を詰まらせて症状を引き起こします。

肺動脈血栓塞栓症の治療
急性の肺動脈血栓塞栓症では、呼吸不全心不全を起こすこともあり、緊急の治療が必要になります。呼吸管理のための酸素吸入を行なうとともに、ウロキナーゼなどの血栓溶解薬を内服します。
再発しやすい病気なので、血栓を溶かすだけでなく、新たに血栓ができないようにするため、ペパリンなどの血液凝固防止剤を併せて使用します。

肺動脈血栓塞栓症の予防には、足首を曲げたり伸ばしたりする運動を行ない、水分を多めにとることが必要です。最近の研究で、4時間以上のフライトで肺動脈血栓塞栓症を発症するリスクが倍増するというデータが明らかになっていますので、頻繁に出張や旅行をする方は注意しましょう。

胸膜炎とは?

胸膜炎とは、肺の表面を覆っている胸膜が炎症が起こす病気です。単独で発症することはほとんどなく、肺炎や肺結核肺がんなどの肺疾患がもとなって起こります。
胸膜に炎症が起こると、胸膜腔に水がどんどんたまって、発熱や胸痛、咳、息切れなどが起こってきます。増えた水を胸水といいますが、胸水が多くなると、呼吸困難をきたすこともあります。

胸膜炎

胸膜炎の原因
肺炎や肺結核、肺がんなどをすでに発病しており、腫瘍や炎症が胸膜を刺激することで起こります。
肺疾患だけでなく、肝硬変心不全、石綿(アスベスト)など、胸膜を刺激するものによって起こる場合もあります。

胸膜炎の症状
痛みがないこともありますが、普通は胸痛を感じます。胸水が増えると胸膜腔が膨らんで心臓や肺を圧迫し、咳、痰、呼吸困難、激しい動悸などの症状が現れ、発熱や悪寒、全身倦怠感といった症状も出てきます。

胸膜炎の治療
肺炎に随伴する胸膜炎では有効な抗生剤の投与を行ない、結核性では抗結核剤の投与を行ないます。
胸水の貯留が多い場合には、持続的に胸水を排除するために、胸腔にチューブを入れる胸腔ドレナージを行ないます。悪性の場合は胸腔内に抗がん剤を中注する場合もあります。

肺がんとは?

肺がんは、肺や気管支などの粘膜に発生するがんで、特に中高年の男性が多くかかります。患者は毎年増加しており、93年にはそれまでずっと1位だった胃がんを抜いて、死亡者数がトップになりました。

肺がん

最近では検診を受ける人が増加し、治療方法も進歩していますが、症状がなかなか現れないため、発見された時はすでにに進行しているケースが多いのが現状です。
なお、肺がんの組織型は以下のように分類されています。

  • 腺がん…最も多いタイプで、肺がん全体の約60%を占めます。肺の奥のほうで発生し、非喫煙者でもかかりえます。
  • 扁平上皮がん…2番目に多いタイプで、全体の約20%を占めます。喫煙との関連が深く、比較的太い気管支に発生しやすいです。
  • 大細胞がん…大型の細胞からなり、増殖・転移が早いのが特徴です。
  • 小細胞がん…早期より転移傾向が強く、悪性度が一段と高いがんですが、化学療法や放射線に対する感受性が高く、治療の中心は化学療法と考えられています。

一般的に、肺がんは気管支から肺胞の部分にできたものをいい、ほかから転移したがんは転移性腫瘍と呼び、区別しています。

肺がんの原因
肺がんは気管、気管支、肺胞の細胞ががん細胞となり、無秩序に増えることで発生します。
最近、がんの発生と遺伝子の異常についての研究が進んでいますが、正常細胞がなぜがん化するのかまだ十分にわかっていません。

しかし、喫煙が大きな危険因子であることは確実で、とくに肺がんの中でも小細胞がんと扁平上皮がんは喫煙との因果関係が深いとされています。また、小細胞がんと扁平上皮がんの大部分は50歳以降に発生します。

一般に、重喫煙者(1日の本数×喫煙年数=600以上の人)は、肺がんのリスクが非常に高いといわれ、毎日喫煙する人と非喫煙者では肺がんリスクに4.5倍もの差があります。

肺がんの症状
一般的な症状としては、ひどい咳や胸痛、喘鳴、息切れ、血痰、声がかれる、顔や首のむくみなどがあげられます。とくに肺門部にできる肺がんは、早い時期から咳、血痰などの症状があらわれます。
これに対して肺野部にできる肺がんは、早期には症状が出にくい傾向にあり、がん検診や人間ドック、あるいは高血圧などの他の病気で医療機関を受診した際に見つかることがあります。

ほかのがんと同様に、疲れやすい、食欲不振、体重減少などがみられます。
また、がんが肺以外に転移した場合は、頭痛や腰痛、肩こり、背中の痛みなど転移して部位に応じた症状があらわれます。

肺がんの診断
咳や痰などの症状がある場合、まず胸部X線単純撮影が行なわれ、次いで気管支内視鏡で肺を直接観察します。また、がんの有無やがんの種類を確定するために、喀痰細胞診や生検が行われます。

通常、生検は内視鏡によって組織を採取しますが、内視鏡が病巣に届かなかったり、ないしきょうで採取された検体が診断に十分でないケースもあります。
その場合には、肋骨の間から細い針を肺の病巣に刺して細胞を採取する穿刺吸引細胞診や、X線CTを利用したCTガイド下肺針生検、胸膜の一部を採取する胸膜政見などの検査が行われます。

肺がんの治療
早期では手術療法が効果的ですが、患者の年齢やがんの組織型、進行の程度を考慮しながら手術療法、化学療法、放射線療法、免疫療法などを組み合わせます。

肺結核とは?

結核は「過去の病気」ではなく、高齢者には少なくない伝染性の呼吸器疾患です。新たに患者となった60歳以上の人は、毎年1万6000人前後にも上っています。

結核菌は空気とともに吸われて肺内に入り込み、肺の端に小さな病変をつくります。でも健康な人だと体内のリンパ球を中心とした防御機構がはたらいて発病するのは数%くらいです。
一度に大量の菌が進入した場合や栄養不良の人、過労の人、乳児、老人などは病気が進行することがあります。

糖尿病や慢性閉塞性肺疾患が再発の要因になります

肺結核の症状
乾性の咳が多いので、全く無症状のこともあり、たまたま検診で見つかることもあります。痰は時に血が混じりますが、いつも血が混じるとは限りません。その他、全身倦怠感や寝汗、微熱などの症状が続くことがあります。

肺結核の検査と診断
胸部レントゲン撮影が基本です。これでほとんど結核を疑わせる陰影が見られます。ただし古い治癒した結核の陰影や肺がんなどとの区別をしておきます。

重要な検査は痰の細菌検査で、3日連続して痰を採ります。痰が採れないと、結核菌廃液でも破壊されないので鼻から細いチューブを胃まで送り胃液を採取しなければならないこともあります。
こうして得た痰や胃液で細菌検査を行います。顕微鏡で直接結核菌を見つけることもありますが、見つからなくても培養して検査を進めます。これで陰性なら結核を否定してもよいですが、陽性なら、さらに有効な抗結核剤の判定をします。

最近は、核酸を使ったPCR法という検査方法が普及し、数日で結果がわかるようになりました。また以前から行われているツベルクリン反応も行いますが、免疫機能が低下している高齢者では肺結核にかかっていても陰性ということがあります。

肺結核の治療
ストレプトマイシンが発見されて以来、次々に抗結核薬が開発されてきました。とりわけリファンピシンは殺菌力が強く治療に大きな成果をあげています。注意することは規則正しく薬を服用することです。どれかを飲むのを忘れてしまうと結核菌に耐性ができ、効き目がなくなってしまいます。

また副作用にも注意が必要です。ヒドラジドには肝障害、エタンブトールには視力障害の副作用がみられることもあります。こういった場合には、医師に相談しましょう。

肺気腫とは?

肺気腫とは、酸素と炭酸ガスの交換を行っている肺胞と呼吸細気管支が拡張し、破壊される疾患です。肺胞と肺胞との間の壁が壊れると、いくつもの肺胞が弾力性を失ったひとつの袋のようになります。こうした肺胞の集まり(気腫性嚢胞)がたくさんできた状態を肺気腫といいます。

肺気腫

肺気腫になると肺胞が破壊され、その数が減り、肺がスカスカの状態になります。
正常な肺胞が減少し、呼吸面積が減少するため、肺でのガス交換に不都合が生じます。

肺気腫の原因
長い間の喫煙や大気汚染、寒冷などの外的な要因と、体質、年齢などの内的要因、気管支炎などの呼吸器系疾患などが原因としてあげられますが、多くの場合、これらのいくつかが複合して肺気腫を引き起こします。

肺気腫の症状
肺の弾力性が低下すると気道を支える力が失われ、息を吸うときは問題ないのに、吐くときには空気が出にくくなり、努力すればするほど息を吐きにくくなります。

その他の自覚症状としては、咳、痰、痩せなどがあげられます。息切れは、季節変動や、日内変動がそれほど著しくなく、体動時に強くなり、休むと改善します。
咳は、肺気腫に感染症を伴ったり、肺性心になったときなど、急性増悪の時に多く認められます。
痰は、慢性の気道炎症により過剰になった、気道分泌物によるものですが、やはり、急性増悪の時に多く認められます。

肺気腫の診断
息切れや呼吸困難などの症状は他の呼吸器の病気でも現れる症状なので、肺気腫かどうかを調べるために、胸部X線検査肺機能検査を行います。

肺機能検査で、努力性肺活量(胸いっぱいに息を吸い込み、最大の速さで一気に吐き出した空気の量)に対する1秒量の比率(=1秒率)が70%以下の場合、肺気腫の疑いがあります。
心臓の検査では異常がなく、胸部X線検査でも異常な陰影が写らない場合にも、肺気腫が疑われます。さらに詳しく調べるためにCT検査を行うこともあります。

肺気腫の治療
肺気腫を治す薬はありません。したがって、病気の進行を食い止めることが治療の目的となります。そこで一番の治療法は禁煙です。
薬物療法では、痰をとるための薬や気管支を広げるための薬などを用います。
そのほか、酸素療法、呼吸リハビリテーション、外科的肺容量縮小術などがあります。
体重が減少している患者さんに対しては、食事療法や栄養補給指導などが行われます。

肺気腫の患者さんは風邪を引くと症状が悪化するので、予防が重要になります。
流行する、しないに関わらず、インフルエンザワクチンは必ず接種しましょう。最近は肺炎球菌ワクチンもあります。呼吸器科専門医に相談するとよいでしょう。

肺水腫とは?

肺の血管内の血液量が増え、流れが滞った状態を肺うっ血といいますが、この状態が進行して、血液中の水分が血管外に漏れ出して、肺胞の中にたまったのが肺水腫です。呼吸のたびに「ゼーゼー」と音がして、喘息のような症状を起こします。

心臓の病気(心臓弁膜症心筋梗塞など)や肺梗塞などがあると、左心室から全身に血液がスムーズに流れなくなります。すると肺血管内圧が上昇して、肺に血液がたまり、血液成分が肺の細い血管の膜から漏れ出てくるわけです。

肺水腫の症状
はじめは息切れ、就寝時の空咳や呼吸困難になるものの朝になれば元の状態に戻る、という程度です。それがだんだんひどくなってくると呼吸困難が強くなり、横になることもできなくなります。
呼吸困難とともに脈拍数が増えて呼吸回数が増加します。肺胞にしみ出した血液成分が気管支を通って出てくるので、血液の混じったピンク色の泡沫状の痰が多くなります。

肺水腫の治療
酸素を吸入したり、痰を除去します。その際、人工呼吸器を使用することもあります。
一番大切な治療としては、即効性のある利尿薬を投与して尿をたくさん出し、肺血管内圧を下げ、血液成分が細胞内に漏れ出るのを防ぐことです。また、強心薬を投与して心臓の心拍を助けることも必要となってきます。