脳の病気のリスト

脳・神経の病気は数多くありますが、共通している特徴としては、どれも治癒が難しいという点が上げられます。日本人に最も多いのは、いまや国民病といわれる脳血管障害(脳卒中)です。
成人の死因は上位から、がん、心臓疾患(心筋梗塞など)、そして脳卒中の順になっています。

脳の病気について

急激な高齢社会にともなって、認知症も増加傾向にあります。近い将来、かぜ、高血圧症、糖尿病、高脂血症、胃炎などに次ぐ患者数をもつ病気になるのではないかと懸念されています。

  • 偏頭痛…頭の片側が、ズキン、ズキンと脈を打つように痛む頭痛のことです。
  • 脳出血…脳の血管の一部が破れて、頭蓋内に出血する病気です。
  • くも膜下出血…前触れもなしに突然、激しい頭痛に襲われ、吐き気や嘔吐がやってきます。
  • 硬膜下血腫…頭部外傷による疾患で、慢性のものは「治る認知症」の一つとして重要です。
  • 脳梗塞…脳の血管がつまり、その先へ血流が流れなくなる病気です。
  • 一過性脳虚血発作…一時的に脳の血液が滞って脳に酸素が乏しい状態となります。
  • 脳腫瘍…頭蓋骨の内部に発生する腫瘍の総称で、悪性と良性があります。
  • 多発性硬化症…中枢神経に脱髄変化が生じて、運動障害や知覚障害が起きる病気です。
  • 脊髄小脳変性症…歩行が上手くいかずにふらつくなどの運動障害がみられる病気です。
  • 末梢神経障害…しびれ、痛みなどの感覚障害、運動障害などが現れます。
  • ギラン・バレー症候群…手足の脱力や筋力の低下、感覚が鈍くなるなどの症状がでます。
  • 三叉神経痛…顔の片側に「刺すような」激しい痛みが突然起こります。
  • 重症筋無力症…全身の筋肉に力が入らず、疲れやすくなる病気です。
  • 自律神経失調症…律神経の調節が円滑にいかなくなって、さまざまな症状が現れます。
  • アルツハイマー病…典型的な初期症状は、数分前のことが思い出せない記憶障害です。
  • ピック病…原因不明の大脳萎縮性疾患で、65歳以下に発症する若年性認知症のひとつ。
  • パーキンソン病…震えと筋肉のこわばり、緩慢な動作を主な症状とします。

片頭痛とは?

片頭痛とは、頭の片側(反対側に移行することもある)が、ズキン、ズキンと脈を打つように痛む頭痛のことです。女性に多い病気で、10歳代くらいから発症して慢性化していきます。いわゆる「頭痛もち」といわれるように、遺伝性があります。

片頭痛について

脳内のセロトニンなどの物質が多量に放出されて脳の血管が収縮し、その後、それらの物質が分解されたときに、血管の拡張と炎症が起こるためという説、三叉神経から血管の炎症を引き起こす物質が分泌されるという説がなどありますが、詳しい原因はまだわかっていません。

片頭痛の症状
前触れのある片頭痛としては、目の前に星や稲妻のような光が見えたり、視野の半分が白いカーテンのようなもので覆われる視覚障害が現れたり、半身がしびれたりします。
この前触れが終わるころに片頭痛が起きます。脈拍に合わせるような、ズキン、ズキンとした痛みです。数時間から数日ほど続き、食欲不振などがおきます。
痛みは1,2時間で最大になりますが、そのときに吐き気や嘔吐があります。

前触れのない片頭痛の場合は、起きる症状そのものは前触れのあるものとほぼ同じですが、持続する時間が少し長くなります。

片頭痛の治療
頭痛発作が始まり、痛みが強いときには、拡張した血管を収縮させる作用があるトリプタン系の薬が有効です。発作初期には発作頓挫薬といわれるエルゴタミンを服用すると、発作の悪化を防ぐことができます。ただし、エルゴタミンには、むかつき、嘔吐、めまいなどの副作用がありますので注意が必要です。

痛みが軽いときは鎮痛薬も効きます。頭痛発作が頻繁に起こる場合は、再発予防のために、血管に作用する抗セロトニン薬や抗うつ薬などを用いる場合もあります。

日常生活では、光や騒音など、片頭痛の誘因となる環境を改善し、過労、ストレスを避け、毎日一定の睡眠時間をとるなど、規則正しい生活を心がけましょう。

脳梗塞とは?

脳梗塞は脳の血管がつまり、その先へ血流が流れなくなる病気で、近年は、アテローム血栓性梗塞症、ラクナ梗塞、心原性脳塞栓症の3つに分類されます。脳梗塞の症状が起こっても20分〜24時間以内で自然におさまってしまう一過性脳虚血発作もあります。

MRIでみる脳梗塞の画像(矢印部分)

脳梗塞の原因
脳に血管を送る太い動脈の内壁にコレステロールなどが染み込んで、お粥のようなかたまり(アテローム)が生じ(粥状動脈硬化)、それによってできた血栓によって血管内腔がふさがる場合(アテローム血栓性梗塞症)、太い動脈から枝分かれした細動脈の血管が高血圧などで変性して動脈硬化が起こり、そこに血栓がつまって起こる場合(ラクナ梗塞)、心臓などでできた血栓が、血流に運ばれて脳の血管をつまらせる場合(心原性脳塞栓症)などが原因です。

高血圧糖尿病高脂血症肥満のほか、睡眠時無呼吸症候群などが危険因子と考えられています。

脳梗塞の症状
アテローム血栓性梗塞症では、麻痺などの運動障害やしびれなどの感覚障害、意識障害、思うように話せないなどの症状が現れます。ラクナ梗塞においても、顔面や手足のしびれ、軽い麻痺などが起こりますが、言語障害や意識障害に陥ることはほとんどありません。

心原性脳塞栓症は突発的に起こるものがほとんどで、症状も突発的に現れ重くなりがちです。身体の片側に麻痺や感覚障害がみられるほか、失語などの症状を示したり、意識障害をともなうことも少なくありません。

脳梗塞の治療
CTやMRIなどの画像検査を行なった上で治療方針が決められます。原因や発症後の経過時間などによって、治療法は異なりますが、急性期は血流を早く再開させるための血栓溶解薬、梗塞層が広がらないようにするための抗凝血薬、抗血小板薬、脳を保護する脳保護薬などを使って治療します。

慢性期は、高血圧、高脂血症、糖尿病、心臓病などをコントロールする薬物療法や、ときには手術を行なうこともあります。重い後遺症を残さないようにするためには、入院直後からリハビリテーションを開始することが重要です。

一過性脳虚血発作とは?

一時的に脳の血液が滞って脳に酸素が乏しい状態(虚血)となり症状が出るが、24時間以内になんら症状や後遺症を残さない経過をたどる疾患のことをいいます。原因として、脳の動脈硬化や微細な塞栓、あるいは脱水症状などにより粘り気を増した血液により、一時的に動脈閉塞が起こることによると考えられています。

一過性脳虚血発作は高齢者に多くみられます

また広義には、著しい徐脈や低血圧など心臓機能が一時的に低下することにより、脳への血流が低下し、脳が虚血状態になる場合も含みます。こうした状態は高齢者に多く、もとには戻らない不可逆的な脳梗塞に移行しやすいので注意が必要です。

一過性脳虚血発作の症状
脳梗塞と同様で左右どちらかの上肢と下肢に、運動障害または感覚障害が起こることが多いです。軽度の運動麻痺があったとしても上記のように24時間以内に症状が全てなくなります。

一過性脳虚血発作の治療
治療も同様に脳梗塞に準じた治療を行います。もっとも早期に治療することで脳梗塞が治り、脳梗塞を一過性虚血発作と診断することもあります。

脳腫瘍とは?

脳腫瘍とは、頭蓋骨の内部に発生する腫瘍の総称で、悪性と良性があります。悪性腫瘍は、周辺の正常組織との境界が不明瞭で、増殖する速度が速く、反対に、良性腫瘍は周辺との境界が明瞭で、ゆっくりと進行します。
また、脳の細胞組織そのもの(脳実質)から生じた腫瘍は多くが悪性で、そのほかの脳を包む髄膜、脳下垂体、脳から直接出る末梢神経を包む鞘(ミエリン)などに発生した場合は、ほとんどが良性です。

矢印の部分に腫瘍が認められます

頭蓋骨内から発生した腫瘍を原発性脳腫瘍、ほかの部位に発生した悪性腫瘍が頭蓋骨に転移した場合を転移性嚢腫瘍といいます原発性脳腫瘍が脳以外に転移することはほとんどありません。
脳腫瘍には多くの種類があります。頻度が高いのは、次のようなものです。

  • 神経膠腫(グリオーマ)…脳実質から発生する悪性腫瘍です。脳腫瘍全体の4分の1、子どのもの脳腫瘍の3分の2を占めます。成人では大脳に、子供では小脳や脳幹に生じることが多いものです。
  • 髄膜腫…脳を覆っている髄膜から発生する良性の腫瘍です。
  • 下垂体腺種…ホルモン分泌に関わる脳下垂体に生じる良性腫瘍です。
  • 神経鞘腫…脳神経を包む鞘に発生する良性腫瘍です。95%が聴神経に生じるため聴神経腫瘍とも呼ばれています。

脳腫瘍の症状
腫瘍が大きくなって頭蓋骨が圧迫されて出る一般症状と、腫瘍が発生した部位が障害されて出る局所症状があります。どちらも段々悪化します。

一般症状の代表的なものが頭痛や嘔吐です。頭痛は寝起きに多く出て、それに嘔吐が併発することが多いのです。そのほか、痙攣や意識障害などがあります。
局所症状はさまざなまのがあります。主なものとしては運動まひ、知覚・言語・視力・聴力・平衡感覚障害などです。このほかにもてんかんや顔の麻痺などが起こる場合もあります。

脳腫瘍の治療
治療法は、腫瘍ができている場所や性質によって異なります。良性腫瘍の場合は、外科手術で腫瘍を摘出します。摘出しきれない良性腫瘍や神経鞘腫、髄膜腫は、ガンマナイフ(開頭せずに、脳深部の病巣に集中的に放射線を照射する方法)を用いることで、ほとんどが治癒できます。

悪性腫瘍の場合も基本的には外科手術によって腫瘍を摘出しますが、補助的に、ガンマナイフなどの放射線療法、抗がん剤による化学療法、免疫療法などを行ないます。ただし、こうした治療を行なっても、悪性腫瘍の予後はあまりよくありません。

脳出血とは?

脳出血は、脳の血管の一部が破れて、頭蓋内に出血する病気です。出血は自然におさまりますが、あふれた血液が固まり(血腫)をつくり、脳の神経細胞を圧迫して、脳の働きが障害されてきます。

頭部CTでみる脳出血の写真

脳出血の症状
脳出血は突然起こることが多い病気です。半身不随、半身の痺れ、起立困難、めまいなどの症状がみられますが、脳のどこで出血が起こったかで症状が異なります。

被穀で出血した場合は手足の運動障害や感覚の異常、視床出血では感覚が鈍くなったり、痺れや軽い運動麻痺、手足や顔の異常な動きがみられます。また小脳出血では、突然激しい頭痛が起こり、嘔吐やめまい、耳鳴り、平衡感覚がなくなって立っていられない、意識がはっきりしなくなる、などの症状が出ます。

脳幹の出血では急に意識がなくなり、昏睡状態に陥り、手足の運動・知覚の麻痺がみられます。これらは高血圧によるものが多いのですが、大脳皮質下出血の場合は、高血圧を伴わない血管異常、能動脈奇形、脳腫瘍からの出血も含まれていることが多いです。

脳出血の原因
直接の原因は、脳深部の血管にできた小さな動脈瘤の破裂ですが、高血圧が深く関与しています。脳深部の細い血管に起きた動脈硬化が進行すると、血管組織がもろくなり、血流の圧力によって動脈瘤ができやすくなります。
これが血圧の上昇によって破裂し、脳出血を起こすことがわかっています。

破れた血管は収縮して血液が固まるので、しばらくすると出血は止まりますが、固まった血(血腫)がまわりの組織を圧迫すると脳にむくみ(脳浮腫)が生じ、さまざまな機能にダメージを与えることになります。

なお、脳血管の破裂は高血圧だけでなく、脳動静脈奇形や歌手の徳永英明さんが経験された「もやもや病(異常血管網ができる病気)」、脳腫瘍などが原因になる場合もあります。

脳出血の治療
頭部CTなどの画像検査で、出血部位や障害の程度を調べて、治療方針が決められます。血圧をコントロールする薬、脳内のむくみを抑えるための薬による治療が中心ですが、血腫を取り除く手術をすることもあります。入院直後から、リハビリテーションを行います。

くも膜下出血とは?

脳を保護している膜には、直接脳をおおう軟膜と頭蓋骨の内側の硬膜、それらの間のくも膜があります。くも膜は、半透明でくもの巣のような構造になっているため、こう呼ばれています。
くも膜と軟膜の間にはわずかな隙間があって、そこには脳脊髄液と網の目上に走る血管が多数あり、この血管が破裂して出血したのがくも膜下出血です。脳梗塞や脳出血が中高年以降に起こることが多いのに比べ、くも膜下出血は20〜30歳代でも発症することがあります。

頭部CTスキャンによる画像です

原因は、頭部の打撲でも起きますが、多いのは脳動脈瘤と呼ばれる脳血管のこぶからの出血です。また脳動静脈奇形でも起こり、これは動脈と静脈の間にある毛細血管が欠如しているため、高い圧力の動脈の血液が静脈に入り込み、壁の薄い静脈が膨らんで破裂するために起こるものです。

くも膜下出血の症状
何の前触れもなしに突然、激しい頭痛に襲われ、続いて吐き気や嘔吐がやってきます。
頭痛は数時間ほど続いて首の筋肉がこわばってきます。顔や手足のまひや知覚障害はそれほどでもありません。意識障害があらわれる場合もあり、出血が多くて昏睡が長く続けば重症で、そのまま意識が戻らずに亡くなることも少なくありません。

また、発症後3週間以内に脳動脈が急に収縮することがあります。この脳血管攣縮があれば意識定価や運動まひがおきたり、脳梗塞になることもあります。

くも膜下出血の治療
くも膜下出血に対する内科的治療と、脳動脈瘤の再破裂を予防するための外科的治療が必要です。外科的治療には、開頭手術を行ない、直接破裂した動脈瘤を観察して、本来の脳栄養血管から遮断する方法(開頭クリッピング術)や、血管内にカテーテルを通して金属コイルを破裂した動脈瘤内に充満させ、本来の脳栄養血管から遮断する方法(脳動脈コイル塞栓術)があります。

これらの手術は、発症から3日以内に行われます。さらに、合併しやすい脳梗塞の予防や治療も行われます。なお、重症の場合は、症状改善の内科的治療が優先されます。
また、後遺症が残った場合にはリハビリテーションが必要になります。

硬膜下血腫とは?

頭部外傷による疾患で、急性と慢性があり、後者は「治る認知症」の一つとして重要です。急性硬膜下血腫は、外傷直後または2〜3日以内に症状が出る血腫で、くも膜下出血に症状が似ています。一方、慢性硬膜下血腫は、頭部外傷後に血液と脳脊髄液が頭蓋骨の内側の硬膜とくも膜の間に貯留し皮膜が形成され、この膜からの出血が繰り返されて血腫が徐々に大きくなって症状が出ます。

頭部CT

硬膜下血腫の症状
慢性の場合、発症はゆっくりで、身体面でも精神面でも症状の変化や進行に気づきにくいことさえあります。身体症状としては、歩行障害、頭痛、吐き気・嘔吐などで、さらに進行すると意識障害を発現します。放置すると重症化します。精神症状としては、集中力の低下、記憶障害、認知症です。

診断にあたっては、頭部単純CTで頭蓋骨の内部に三日月形または凸レンズ型の異常陰影を認め、血腫が大きいと脳の圧迫と偏位も認めることがあります。

硬膜下血腫の治療
症状がある慢性硬膜下血腫は脳外科的治療の適応であり、高齢者にも安全な脳外科手術です。なお、症状のないものについては必ずしも手術の必要はありません。

手術は局所麻酔で頭蓋骨に孔をつくり、ここから血腫を洗浄除去する方法をとります。早期に手術が行われると劇的に症状が改善し、通常リハビリテーションは必要としません。

多発性硬化症とは?

脳や脊髄のあちこちに病変が生じ、一時的に良くなったり悪くなったりして再発を繰り返し、慢性的になる病気です。若い女性にややや多く見られます。厚生労働省による難病(特定疾患)の指定を受けています。

多発性硬化症

原因には免疫疾患説と何らかのウイルスによる感染説がありますが不明な点が多い病気です。自己免疫疾患とは、からだが細菌などに感染したときにその菌に対する抗体をつくって菌をやっつけますが、この抗体が間違って自分自身の組織に対してつくられた場合にそれが原因で起こる病気です。

この病気は、髄鞘(脳や脊髄の神経を連絡する神経繊維)に抗体ができて鞘を壊し、神経の情報がうまく伝わらなくなると考えられています。

多発性硬化症の症状
典型的な症状は視力障害で、複視(ものが二重に見える)や視力低下、痛みなどが起こります。手足の力が抜ける、動きがぎこちなくなるなどの運動障害もよくみられます。
そのほか、体の一部が刺されるような異常感覚や、しびれ、痛みをともなうこともあります。

多発性硬化症のなかには、両眼の視力障害と横断性脊髄炎(歩行障害や下半身の感覚障害が起こる病気)が数週間以内に相次いで現れるものがあり、これを視神経脊髄炎(デビック病)といいます。

多発性硬化症の治療
急性期には副腎皮質ステロイド剤の大量投与が有効です。慢性例には、積極的にリハビリテーションを行なうことで、かなりの機能が回復する場合もあります。最近、再発の予防にインターフェロンが有効といわれ、血漿交換も効果をあげています。

全体の約10%の患者は重い経過をたどるとされており、この場合は数回以上、数十回もの再発を繰り返すことがあり、その結果、下半身まひや知能障害などを起こしてきます。

急性期には入院治療が原則ですが、慢性化したら家庭での医師の指導のもとに生活します。この病気は再発の予防が大切で、家老や精神の負担を避け、風邪などに注意します。

脊髄小脳変性症とは?

脊髄小脳変性症(SCD)とは、手足の筋肉は衰えていないにもかかわらず、歩くときにふらついたり、字が上手くかけないなどの運動障害がみられる病気です。厚生労働省による難病(特定疾患)の指定を受けています。木藤亜也さんの著書「1リットルの涙」(ドラマでは沢尻エリカさんが主演)でこの病名を始めて知った方も多いと思います。

SCD

原因は不明ですが、検査をすると小脳や脳幹に萎縮が認められます。
なんらかの影響で小脳や脳幹の一部が変性し、これらの部位をつかさどっている運動機能や言語機能などに障害が生じると考えられています。

脊髄小脳変性症の症状
手足の動きがぎこちなくなる運動失調が症状の中心です。この病気は障害の起きる場所によって、フリードライヒ失調症やメンツェル型失調症、ホルムス型失調症などに分類されます。
全体的な症状としては、歩行が不安定になったり、眼球の動きに障害が出たり、手仕事がしにくくなったり、言語障害も起きます。

脊髄小脳変性症の治療
根治させる方法はなく、それぞれの症状を軽減させる対症療法が基本となります。
運動障害に対しては甲状腺刺激ホルモン分泌ホルモン(TRH)が効果を示すことがあります。
パーキンソニズム(震えや筋肉のこわばり)には抗パーキンソン薬が使われます。
薬物療法とともに、症状に合わせて言語療法や、リハビリテーションが行われます。

末梢神経障害とは?

末梢神経とは、脳を除いた脊髄や手足までの神経を総称したものです。末梢神経障害では、しびれ、痛みなどの感覚障害、運動障害などが現れます。原因としては、腫瘍(脊髄腫瘍など)、脊椎疾患(後縦靱帯骨化症など)、圧迫(手根管症候群など)、外傷(脊髄損傷など)、ビタミン欠乏、中毒、原因不明のギラン・バレー症候群、がん治療の放射線照射の後遺症などがあります。

症状は頭から足の指まで現れます

末梢神経障害の症状
症状は、運動障害や感覚障害などが、一時的なものも進行して重度になるものもありますが、頭から足の指まで身体のあらゆる部位に現れます。症状はその原因によって多様です。

末梢神経障害の検査と診断
症状は自覚的なものなので、しびれや痛みを感じる部位、発症の様子、新構成などを聞きます。その痛みに沿って皮膚の変化があるかないか、抹消動脈の脈を触れるかを診ます。さらに触覚、痛覚、温度感覚、振動感覚や手足の運動を神経学的所見から把握します。

これらの所見から推測される原因によって必要な検査を進めます。骨の単純レントゲン撮影、CT、MRI、血管造影検査、脳脊髄液検査、血液検査などを行います。こうした症状と検査結果から診断します。

末梢神経障害の治療
治療は原因によって多様です。打撲による神経の痛みは日数が経てば自然治癒しますが、がん性疼痛はモルヒネなどの薬でも軽減できないこともあります。
治療は、冷湿布、局所麻酔剤の注射、神経ブロック、骨の変形や脊髄腫瘍などの手術、消炎鎮痛剤などの薬物です。これらの治療は原因療法と対症療法などが混在しています。

ギラン・バレー症候群とは?

ギラン・バレー症候群とは、風邪の症状や下痢の後に手足の左右の同じところにしびれが出て、脱力や筋力の低下、感覚が鈍くなるなどの症状が出る病気です。症状は2〜3週間でピークに達しますが、その後は少しずつ自然に回復していきます。
ギランとバレーというフランスの神経病学者が報告した病気なので、この名前がつきました。

デューク東郷(ゴルゴ13)も劇画内では第3巻(1969年!)からこの病気を発病していますし、最近では川口順子・元外務大臣がギラン・バレー症候群であることを自ら発表しておられるので、病名をご存知の方は多いと思います。

ギラン・バレー症候群の原因
ウイルス感染がきっかけで免疫機能が異常な反応を示し、さまざまな神経炎を引き起こすものです。この自己免疫異常によって神経線維の絶縁体の役目をしているミエリンがが傷つけられ、神経伝達に支障をきたして発症すると考えられています。

ギラン・バレー症候群の治療
急性期には、副腎皮質ステロイド薬の大量服用が有効です。重症の場合は、自己免疫異常の原因となっている交代を減らす目的で、血漿交換(体外循環回路に患者の血液を通し、抗体を含む血液を捨てて、代替血漿を体内に戻す方法)が行なわれることがあります。
治療によって8割は完全に回復しますが、2割には障害が残りますので、リハビリテーションが必要になります。

三叉神経痛とは?

三叉神経痛とは、目・鼻から耳にかかる一帯・口や顎の部分の3つに枝分かれした神経(三叉神経)がなんらかの刺激を受けて、顔の片側に「刺すような」激しい痛みが突然起こる病気です。
中年以降の女性によくみられる神経痛の代表で、俗に顔面神経痛として知られています。

三叉(さんさ)神経痛

三叉神経痛の症状
痛みは顔面の片側に急激に起こり、「焼けるような」「電気が走るような」「刺しえぐるような」などと形容される激しい痛みに襲われます。ときには後頭部や肩まで痛むことがあります。
あくびやくしゃみ、会話、歯のかみ合わせ、食事、洗顔、冷たい水や風などが引き金となって痛みの発作が起こり、数秒〜数分間続いて、短い休止があってまた再発するというパターンを、数時間繰り返します。この状態が、数日からときには数ヶ月間続くこともあります。

三叉神経痛の治療
最初は、発作を予防する効果のある、抗てんかん剤のテグレトールを試してみます。
1日2〜3錠が有効とされていますが、テグレトール自体にめまいや湿疹を引き起こす副作用があるので、最初は半錠からはじめます。テグレトールが効かない、副作用のために使用できない、痛みがひどくて日常生活に支障をきたす場合は、麻酔薬による神経伝達のブロックや手術、ガンマ・ナイフ放射線治療などが行われます。

手術方法は、耳の後ろに約5cmほどの皮膚切開を行ない、その周囲の剃毛を行います。
開創した後に500円玉程度の大きさの開頭を行い、圧迫している血管を神経から分離させて、両者の間にスポンジを埋め込みます。原因が腫瘍であれば、腫瘍を切除する手術が行われます。

ガンマ・ナイフというのは、多方向から、放射線を目標に向かって集中的に照射して、周りの正常組織に当たる放射線の量を減らす治療法のことです。脳腫瘍の治療にも使われていますが、最近この放射線を三叉神経の根元に照射すると、三叉神経痛に効果があることが分かってきました。

重症筋無力症とは?

重症筋無力症とは、末梢神経が筋肉に接合する部分に障害が起きて、脳からの指令が筋肉にうまく伝わらなくなるために、全身の筋肉に力が入らず、疲れやすくなる病気です。
まれに、筋肉に脱力が急激に悪化し、呼吸もできなくなる症状(クリーゼ)が起きることもあり、注意を要します。新生児から高齢者まで、どの年齢でも発病しますが、女性の方が多いとされています。

重症筋無力症

重症筋無力症の原因
神経から筋への刺激を受け持つ伝達物質「アセチルコリン」が、免疫系の異常によって神経と筋肉の接合部(神経筋接合部)で阻害されるために起こります。

重症筋無力症の症状
全体的に手足の力が思うように入らず、使っているうちに弱くなり、しばらく休むと、また力が出てくるようになります。
症状が軽い場合は、まぶたが下がり(眼瞼下垂)、眼球の動きも不十分になり、ものが二つに見えたり、話をしているうちに声が出なくなったりします。そのうちものを噛んでいると疲れて飲み込めなくなったり、まぶたや手足の筋肉が疲れて動かなくなってきます。

進行すると顔面筋、嚥下筋、舌筋などもおかされ、手足の筋力も低下し、呼吸筋も麻痺して、生命の危険があります。

重症筋無力症の治療
この病気は専門医にかかることが望ましく、病院の神経ないかの診断を受けるといいでしょう。
根本的な原因となっている免疫異常を改善するためには、発症から1〜2年以内に、胸腺摘出手術を行なうのが最も有効です。手術後は、免疫抑制作用のある副腎皮質ステロイド薬の服用や、血漿交換をおこないます。

アセチルコリンの働きを強める作用のある薬(コリンエステラーゼ阻害剤)は軽症例では中心的に用いますが、中等度以上では、ほかの薬と併用します。

自律神経失調症とは?

われわれの心臓や内臓は休みなく働いていますが、その作業は脳の指示によって行なわれているわけではなく、交感神経と副交感神経 からなる自律神経によって調節されています。
自律神経失調症とは、その自律神経の調節が円滑にいかなくなって、さまざまな症状が現れる病気です。男女ともに起こるもので、発症する年齢も赤ちゃんから高齢者までと幅広くなっています。

ストレスをケアすることが大切です

自律神経失調症の原因
圧倒的に多いのは、心理的・社会的ストレス、不規則な生活習慣、ホルモンの分泌異常などが自律神経に影響を及ぼし、交感神経と副交感神経のバランスが乱れて身体に変調をきたす心身症タイプです。

自律神経失調症の症状
体がだるい、疲れやすい、動悸がする、胃が重い、よく眠れない、頭が痛いといった不定愁訴がありながら、検査をしても病気や以上が認められない場合に、よく自律神経失調症と診断されます。
しかし実際には、自律神経の障害が原因ではなく、神経症やうつ病による結果であることがあります。

病気としての自律神経失調症は、おもに脊髄小脳変性症などのように自律神経がおかされて、組織などに異常が発生するものと、先天的に自律神経系に障害がある場合を指します。
症状としては、どちらも発汗や体温の調節不能、性欲減退、低血圧、失神発作、夜尿、失禁などがあげられます。

なお自律神経系の病気には、特に原因が見つからないまま局所的な自律神経障害があらわれる特殊な病気があります。レイノー病や、皮膚や皮下組織にむくみがあらわれるクインケ浮腫、多汗症などがその代表です。

自律神経失調症の治療
心理的な要素が大きく関わっているため、薬物療法(自律神経調節薬、抗不安薬、抗うつ薬など)で症状をある程度安定させ、続いて心の問題を解決するための心理療法やカウンセリングが行われます。
睡眠時間と食事を一定にして生活リズムを整える、無理を重ねないで適度に休養をとるなど、日常の心がけで症状が改善することも少なくありません。

パーキンソン病とは?

パーキンソン病は、震えと筋肉のこわばり、緩慢な動作を主な症状とする病気で、厚生労働省の難病(特定疾患)に指定されています。
この病名は発見者であるイギリスのジェームズ・パーキンソン氏に由来しています。

マイケル・J・フォックス

近年では、ハリウッド俳優のマイケル・J・フォックス氏(写真参照)がこの病気であることを公表し、同病の治療を目指したリサーチ財団を設立して、ロビー活動などを行なっています。

パーキンソン病の原因
脳の黒質と呼ばれる部位にあるドパミン(神経伝達物質の一種)を放出する神経細胞が消失するために、ドパミンが不足して起こります。
ただ、神経細胞がなぜ消失するかはわかっていません。主に中高年以降に発症するので、加齢と関係があると考えられています。

パーキンソン病の症状
手足の振るえと筋肉のこわばり、動作緩慢が主な症状です。
病気は筋肉のこわばりで始まりますが、実際には震えで気付くことが多いとされています。こわばりや震えは体の片側に始まり、進行するにしたがって両側に起こってきます。
震えは安静時にひどくなり、何かしようとするときには止まるので、日常生活への影響はみかけほど強くありません。

筋肉のこわばりが進行すると、顔は無表情にあり、立った姿勢が前かがみで、肘と膝を曲げた状態になります。また、歩行中は前のめりの姿勢から立ち直れないため、小走りになってしまいます。そのため、何かに捕まるか、転倒するまで止まれないことがあるので危険です。

このほか、便秘やひどい発汗、唾液の過剰分泌などの症状も見られます。
進行は緩やかですが、治療しないでいると、10年ほどで食事や会話といった日常生活に支障をきたし、介助なしでは動けなくなります。

パーキンソン病の診断
震えや動作などの特徴的な症状で比較的容易に診断できます。髄液検査や副腎皮質ホルモン、SPECT・PETなどの精密検査が行なわれる場合もあります。
また、パーキンソン病と似た症状を示す「パーキンソン症候群」との鑑別が必要なため、脳のX線CTやMRIなどの検査が行なわれます。
例えば、パーキンソン病の場合にはCTで異常は見つかりませんが、脳血管性パーキンソン症候群では脳梗塞が起きていることがあります。

パーキンソン病の治療
手足のこわばりや震えといった症状には、各種パーキンソン病治療薬を用います。
また、近年は脳深部刺激療法や移植手術、遺伝子治療の研究も進んでおり、今後は治療法の選択肢の幅が増える可能性があります。

アルツハイマー病とは?

アルツハイマー病の典型的な初期症状は、昔のことはよく覚えているのに、数分前のことが思い出せないという記憶障害です。そのほか、抑うつ気分になったかと思うと多弁になるなど、情動的な変化もみられます。

認知症の半数はアルツハイマーが占めています

症状は徐々に進行していき、やがて、日時や場所、人と自分との関係がわからなくなっていきます。さらに、洋服の着脱などの日常的な動作が困難になり、家族の顔も判別できなくなります。最終的には会話も不能になり、寝たきり状態になります。

アルツハイマー病の原因
加齢に伴い、神経細胞を傷つけるタンパク質が脳内にたまって老人斑ができ、それによって神経細胞が変性して死んでしまい、全体数が減少するため知能機能が低下すると考えられています。

また、患者の脳を調べてみると、大脳にあるアセチルコリンという神経伝達物質が著しく減少していることも確認されており、この物質がさまざまな脳機能の障害とかかわっているとみられています。

アルツハイマー病の治療
現在、この病気を完治させる薬はありませんが、アリセプトという薬が、初期から中期のアルツハイマー病の記憶障害や学習障害を改善し、病気の進行を緩やかにする効果が確認されています。

ピック病とは?

アルツハイマー病に代表される原因不明の大脳萎縮性疾患で、65歳以下に発症する若年性認知症のひとつです。精神医学者のアーノルド・ピック氏が発見したことからこう命名されました。
記憶障害を起こすアルツハイマー病と異なり、脳の委縮によって感情の抑制が効かなくなり、毎日同じ行動を繰り返したり、ちょっとしたことで怒りっぽくなるなどの言動がみられるなど、主に「行動障害」が症状として現れるのがこの病気の特徴です。

平均発症年齢は49歳とアルツハイマーに比べて若干早めです。ピック病の発症が分かりにくいこともあったため、これまでの患者の数はそう多くありませんでしたが(国内の患者数は約1万人)、病気が一般に認知され始めると患者数が増えてくると考えられています。
また、画像診断技術の向上で正しく診断を得やすくなったものの、うつ病や統合失調症と誤診されているケースも多く実態調査が進められています。

ピック病の原因
どのようにしてこの病気になるかはわかっていません。ただし、いくつかのタイプがこの病気にはあることがわかってきています。一つはピック球という異常構造物が神経細胞の中にたまるタイプです。
また近年発見されたものとして、TDP-43というタンパクがたまるタイプがあります。このようにいくつか異なる原因があると考えられていますので、最近ではピック病という病名はピック球がみられるタイプに限って使う傾向になりつつあります。

ピック病の症状
主な症状としては滞続言語(会話の内容とは無関係に、同じ話を繰り返す)や自制力低下、感情鈍麻、異常行動(浪費、過食、収集、徘徊など)、人格変化(無欲・無関心)が表れます。アルツハイマー病の場合だと、記銘力・記憶力低下などの知的機能低下が初発症状に表れますが、ピック病の初期は記憶・見当識・計算力は保たれています。

治療法はまだ十分に分かっていませんが、専門家の間では脳血流を活発にする栄養補給や適切なケアによって、悪化を遅らせることは可能であるとされています。