腎臓と尿路の病気のリスト

加齢にともない、腎動脈には粥状動脈硬化が起きやすくなり、細い動脈にも動脈硬化が生じてきます。尿細管にも萎縮や肥厚がみられるようになります。
また、腎臓の血流量の減少や糸球体の濾過機能の低下も起こってきます。さらには、老化によるホルモンの分泌減少も加わり、腎臓が持つ多様な機能は次第に低下してきます。

腎臓と尿路の病気について

膀胱や尿道などにも老化とともに変化が起こり、女性では尿失禁、男性では前立腺肥大症による排尿障害などが起こりやすくなります。腎臓の機能が損なわれたり、尿路に異常が起こると、体内に老廃物や水分がたまって健康がおびやかされることになります。
定期健診などで異常が指摘された場合は、精密検査を受けましょう。

  • 急性腎不全…正常に機能していた腎臓が急にその働きを停止した状態です。
  • 慢性腎不全…腎臓の機能が長期間にわたって徐々に低下していく状態をいいます。
  • 尿毒症…腎不全の最終段階で腎機能が著しく低下した状態です。
  • 腎臓がん…尿をつくる腎細胞の近位尿細管に発生するがんです。
  • 腎盂腎炎…細菌が膀胱から尿管を逆流し、腎盂や腎実質に強い炎症を起こす病気です。
  • 膀胱炎…大腸菌などの細菌が尿道から膀胱に入り込み、炎症を起こす病気です。
  • 膀胱がん…尿路の悪性腫瘍の中で最も発生率の高いのが膀胱がんです。
  • 腎結石・尿管結石…腎盂や腎杯にカルシウムやリン、尿酸などの結石ができます。
  • 尿道炎…尿道炎や尿道外傷などの後遺症で尿道の内腔が狭くなる病気です。
  • 尿道狭窄…副腎皮質ホルモンの分泌低下が慢性的に起こる病気です。
  • 膀胱尿管逆流…尿が尿管や腎盂に逆流してしまいます。
  • 過活動膀胱…膀胱が脳からの指令を待たずに収縮して、強い尿意を引き起こします。
  • 神経因性膀胱…膀胱と尿道を支配する神経系疾患によって起こる膀胱と尿道の機能障害。
  • 急性腎炎…喉頭炎や咽頭炎などに引き続いて、腎臓の糸球体に炎症が起こる病気です。
  • 慢性腎炎…タンパク尿や血尿などの腎炎の症状が1年以上続くものです。
  • 糖尿病性腎症…腎臓の血液濾過機能が低下して、老廃物が血液中にたまる病気です。
  • ループス腎炎…全身性エリテマトーデスの患者の約90%以上が罹るとされる腎炎です。
  • ネフローゼ症候群…多量にタンパク尿がでる病気の総称をネフローゼ症候群といいます。

急性腎炎とは?

喉頭炎や咽頭炎などに引き続いて、腎臓の糸球体に炎症が起こる病気です。溶血性連鎖球菌などの感染がきっかけとなりますが、直接の原因は菌に対する免疫反応です。
菌が感染するとそれに対して抗体がつくられ、免疫反応がおきて、免疫複合体という物質がつくられます。そして、それが糸球体に沈着して炎症を起こすのです。

腎臓の3D画像

急性腎炎の症状
主な症状は、血尿、タンパク尿、むくみ、血圧上昇ですが、これらのうち、いずれかが欠ける場合もあります。血尿は炎症による糸球体の破損で起こるもので、患者の約半数では肉眼で見ても明らかで、発病後数日から数週間で次第に減少します。
しかし、顕微鏡で見える血尿は、タンパク尿がなくなってからも続き、数ヶ月から1年後までみられることがあります。

目の周りのむくみは顔色の蒼白とともに腎炎の特徴で、次第に下肢や陰嚢にも現れ、ときに胸水や腹水がたまることもあります。また、初期の患者には高血圧がみられますが、尿の出がよくなると血圧は下がります。

急性腎炎の治療
安静と食事療法が基本ですが、発症の初期には抗菌薬を服用します。むくみが強いときには利尿薬を用います。安静と保温は血管の緊張を緩め、腎臓の血流量を増やします。激しい運動や激務は避け、規則正しい生活を習慣づけるようにします。

食事は、低下した腎臓機能に負担をかけないように、減塩、低タンパク食を心がけます。むくみがあって尿量が少ない時期は、食事からの塩分摂取は1日3g程度を目安にし、併せて水分も制限します。

こうした治療によって尿の異常は数ヶ月でもとに戻りますが、発症後半年から1年間は尿検査による経過観察が必要です。

慢性腎炎とは?

タンパク尿や血尿などの腎炎の症状が1年以上続くもので、しばしば高血圧を合併します。原因の多くは腎臓の糸球体(尿をつくるために血液を濾過するところ)がなんらかの形でダメージを受けたものですが、正確な発症時期がわからないことがほとんどです。

腎臓のイメージ

慢性腎炎の症状
タンパク尿や血尿がみられ、症状が進むと、むくみや高血圧も現れてきますが、その経過はさまざまです。ただ、初期にはほとんど自覚症状がないため、風邪をひいたときや健康診断、妊娠時などの尿検査で、タンパク尿が検出されて、偶然発見されるケースがほとんどです。進行して慢性腎不全になって初めて気付く人も多いのです。

慢性腎炎の治療
早い時期に腎生検という検査(腎臓の組織を採取して、病状をより詳しく診断します)を行なって腎炎の型を決定することが大切です。必要に応じて副腎皮質ホルモン剤や免疫抑制剤などの薬物療法が行なわれることがあります。
食塩を制限して血圧を管理する食事療法が基本ですが、なるべく安静にして身体を休めることも大事です。

同じ症状でも、何十年も正常な腎機能を保つ人がいる一方、腎機能の低下が速く、腎不全に陥る人もいるので、早期発見・早期治療および定期的な受診を心がけましょう。

糖尿病性腎症とは?

糖尿病性神経障害および糖尿病網膜症と並ぶ糖尿病の三大合併症の一つで、高血糖状態が持続するために、腎臓の血液濾過機能が低下して、老廃物が血液中にたまる病気です。
近年、糖尿病性腎症から腎不全になるケースが急増しており、新規に透析療法を受けている人の約40%を占めるに至っています。

糖尿病の三大合併症の一つです

糖尿病性腎症の症状
はじめに見られる症状はたんぱく尿の出現ですが、近年ではたんぱく尿が出ていなくても、尿中アルブミン排泄量の増加によって早期発見ができるようになりました。また発病の早くからの高血圧をともなうことが多いとされています。

そして、異常が続いて尿中へ出るたんぱくの量が増加してくると 、血液中のタンパク質は減少してネフローゼ症候群となり、むくみがでるようになってきます。こうなると末期の腎不全へと移行しやすくなります。
また、目の網膜症のような眼症状や四肢の神経障害もみられるようになります。

糖尿病性腎症の治療
糖尿病の早期から血糖コントロールを適切に行なうことで、腎症の発症を防ぐことができます。また、発症後も低タンパク食を中心とした食事療法、血糖値や血圧のコントロールを厳密に行なえば、病状の進行を抑制できます。

高血圧の場合は減塩食にし、必要に応じてアンジオテンシン転換酵素阻害薬などの高血圧治療薬も使用します。進行して腎不全になると、透析療法(人工透析)を行なう必要があります。

ネフローゼ症候群とは?

腎臓の糸球体の障害によって、本来は濾過されないはずのタンパク質が濾過され、尿細管での再吸収が追いつかず、多量にタンパク尿がでる病気の総称をネフローゼ症候群といいます。
尿中にタンパク質が排泄されるため、血液中のタンパク濃度下がり、血液中のコレステロールが増えて高脂血症になります。診断基準は1日3.5g以上のタンパク質が尿中に排泄され、かつ血清タンパクが6.0g/dl以下の状態に該当することとされています。

子供の場合、好発年齢は2〜6歳です

大崎善生氏のベストセラーノンフィクション「聖の青春」の故・村山聖八段(贈九段)もこの病気と闘っておられましたので、将棋の好きな方は以前から病名をご存知なのではと思います。

ネフローゼ症候群の症状
自覚症状では、まぶたや顔や足などのむくみが特徴です。風邪をひいたときのような倦怠感や食欲不振なども現れます。また、尿の量が減ってきて、尿検査では多量のタンパク尿がみられます。

血液検査では、タンパク質が減少してコレステロールや中性脂肪が増える高脂血症がしばしば認められます。腎臓機能の障害が進行すると、重篤な腎不全となり、生命にかかわることもあります。

ネフローゼ症候群の治療
安静と保温、タンパク制限・減塩の食事療法が必要ですが、むくみやタンパク尿が高度の間は入院加療が必要です。
薬物療法としては、まず第一にステロイドホルモン剤(プレドニン)をはじめは多量に使用し、症状がよくなるにつれて使用量を減らし、やがて1日おきくらいに使用するようにします。

このステロイド剤でむくみやタンパク尿がなくなり、血液成分が正常になっても、3年くらいの間は度々再発することがあるので、ネフローゼ症候群では症状のなくなった状態を治癒とはいわないで、寛解といいます。

むくみがはげしいときには、尿量を増やすためにステロイドホルモン剤のほかに、ラシックス、エタクリン酸、アルダクトンAなどの利尿剤が併用されます。
これらによって尿量が増えると、体内のカリウムが減るので、カリウムの含有量が多い野菜や果物をとることが大切です。

また、アルブミン液、代用血漿なども使用されますが、これらの方法でもむくみがとれないときは、腹部を穿刺して腹水を除きます。さらに、エンドキサンやイムラン、ブレディニンのような免疫抑制剤の使用も試みられています。

急性腎不全とは?

さまざまな原因で、それまでに正常に機能していた腎臓が急にその働きを停止した状態を急性腎不全といいます。発症率は低い病気ですが、尿がほとんど出なくなる乏尿性の症状がある場合は死亡率が高くなります。発症すれば数日でたいていは重症となってしまうので、緊急に透析療法を行なう必要があります。
慢性腎不全とは異なり、治療によってその半数は治ります。

腎臓

腎前性腎不全
熱射病や大出血、激しい下痢あるいは心不全肝硬変などによって、腎臓へ送られる血液が少なくなります。このことで腎臓の機能が低下するものです。

腎性急性腎不全
急性腎炎や急性腎盂腎炎、薬物、造影剤などにより、広範囲に尿細管が破壊されてしまった場合にこの病気がみられます。原因となる薬剤としては抗生物質、非ステロイド系抗炎症剤(痛み止め)などがその代表です。

腎後性急性腎不全
外傷や腎結石・尿管結石あるいは前立腺肥大、腫瘍などが原因で、尿管や膀胱などが圧迫されて閉塞し、腎臓から尿が通れなくなるために起こります。

急性腎不全の症状
突然、尿の量が減ったり尿が出なくなるため、血液中に老廃物がたまって食欲不振や吐き気、嘔吐などがみられます。また水分の排泄が悪く、体内に水が溜まることで心臓や肺に負担がかかり、高血圧や呼吸困難など尿毒症の症状が出てきます。

進行すると意識障害となり、痙攣を起こしたり昏睡状態に陥るなど、生命にかかわります。高カリウム血症が急に起きると心停止して死に至ることもあります。

急性腎不全の治療
腎前性腎不全は緊急に輸血や輸液を行なって、腎臓への血液の流れを回復させます。
腎性急性腎不全は、原因となった薬剤などの使用を中止します。どちらも一時的に尿細管が壊死しますが、再生して2〜3週間後には尿が普段のように出るようになります。重症の場合は透析療法を行ない、全身状態を改善します。
また、塩分やタンパク質を減らした食事で腎機能の低下を防ぐ保存療法を行ないます。

腎後性急性腎不全は、腎盂や尿管にカテーテルを入れて尿を導き、体外に排出させます。症状が長引く場合は、尿の取り出し口を手術によってつくる場合もあります。

慢性腎不全とは?

慢性腎炎糖尿病腎症などの病気が原因で、腎臓の機能が長期間にわたって徐々に低下していく状態をいいます。女性に多い慢性腎盂腎炎ループス腎炎なども原因となります。
急性腎不全と比べると、数ヶ月から数年あるいは数十年という長期間で腎機能が低下するもので、回復することはありません。

慢性腎不全の症状
初期には自覚症状はありません。腎機能が正常の20%以下に低下して、夜間の排尿解するが増えることで初めて異常に気付く人がほとんどです。
老廃物の血中濃度が高くなり、初めは全身の倦怠感や無力感、むくみ、食欲不振、吐き気、高血圧などが起こりますが、病状が進行してくると尿毒症の症状が現れたり、痙攣や昏睡状態に陥ることもあり、大変危険です。

慢性腎不全の治療
治療は、これ以上腎臓が悪くならないようにするのが基本です。最初は食事療法で症状の悪化を抑え、それでも良くならないときは透析療法を受けます。
食事療法かカリウムやリンを控え、たんぱく質の摂取量を少なくします。健康な人の1日のたんぱく質摂取量は70〜80gですが、腎機能が20%以下になった場合は、健康な人の半分に近くに抑えます。

ただし、たんぱく質摂取量を減らせば減らすほど効果があるかというと、そういうわけにはいきません。からだを作っている筋肉などを維持するためには、一定量のたんぱく質が必要だからです。
注意すべき点は摂取エネルギーを減らさないことです。摂取エネルギーが減ると、からだは筋肉などをつくっているたんぱく質で不足するエネルギーを補うため、老廃物を増やしてしまう結果になるからです。

こうした食事療法でも症状が良くならない場合は、透析療法を受けて、腎臓の働きを人工的に代行させます。しかし完璧な治療法ではなく、合わせて薬物療法も行わなければなりません。合併症に気をつけながら継続することになります。

尿毒症とは?

腎不全の最終段階で腎機能が著しく低下して、老廃物が排出されずに体内にたまると、さまざまな全身症状が出現するようになります。これを尿毒症といいますが、病気というより症状です。
透析を受けずに放置すると、数日から数ヶ月で死に至る危険な状態です。

腎臓

尿毒症の症状
1日の尿量が極端に減って乏尿や無尿になります。さらに、むくみがひどくなり、消火器、神経系、循環器系、骨などにさまざまな症状が現れてきます。食欲不振や頭痛、鼻出血などのほか、意識障害や出血傾向もみられます。

尿毒症の治療
入院して絶対安静を保ち、減塩と低タンパク食の食事療法と薬物療法を行ない、併せて透析療法の開始が必要となります。

腎臓がんとは?

腎臓がんとは、尿をつくる腎細胞の近位尿細管に発生するがんです。透析を受けている患者さんに高率に発生することが報告されています。40歳以上に多く、ときに30歳代や20歳代でも発症します。
最近は、画像診断技術の進歩や健康診断の受診率が高くなったこともあり、自覚症状のない早期に発見されることが多くなりました。

CT検査で発見された腎臓がん

腎臓がんの症状
なんの原因も無く、突然に血尿が出て、数日から数週間続いて急にと止まり、尿が透明になるというような血尿を繰り返すことが多く、頻尿や排尿痛などの苦痛は全くありません。
ごく軽い血尿から、血が固まって出るような強い血尿まであり、後者は尿管に凝血が詰まり、尿管結石と同じような鈍痛や疝痛を起こしたり、膀胱内に大きな凝血がたまって尿道口をふさいでしまうため、尿閉になることもあります。

進行してくると、腎臓が大きくなるので触診できるようになり、また鈍い痛みを背側部にかんじるようになります。血尿、腎臓の腫瘍、腎臓の痛みが三大症状といわれています。
以上の症状のほかに、早期に発熱することもあります。多くは微熱ですが、進行の速いものには高熱を出すものもあります。

現在では、健康診断やほかの疾患の検査中に、超音波(エコー)検査やCTスキャン、MRIなどの画像検査で、全く無症状の早期の腎臓がんが発見されることが多くなりました。
肺、肝臓、リンパ節、骨に転移しやすく、その場合は転移した臓器に症状が出てきます。

腎臓がんの治療
手術が最良の方法ですが、抗がん剤や放射線療法も有効なことがわかっています。
一般には、がんのあるほうの腎臓を、周囲の脂肪組織やリンパ節とともに切除します。腎臓は二つあるので、片方が正常であれば、十分にはたらいてくれます。
肺、肝臓、リンパ節に転移した場合は、抗ウイルス薬ののインターフェロンやインターロイキン2製剤のイムネースが有効です。

腎盂腎炎とは?

腎盂腎炎とは、大腸菌などの細菌が膀胱から尿管を逆流し、腎盂や腎実質(皮質)に感染して強い炎症を起こす病気です。上気道炎などから、細菌が血液を通って腎臓に感染する血行性のものもあります。
膀胱尿管逆流や、腎結石・尿管結石尿管狭窄膀胱炎があると罹患率が高まります。また、女性は尿道が短く外尿道口が膣や肛門に近いために、男性に比べて発症率が2倍となっています。
急性段階で正しい手当てをすれば比較的簡単に治りますが、不摂生をしたりして放置すると、10〜20年かけて慢性状態に陥る危険性があります。

腎盂腎炎

腎盂腎炎の症状
急性の場合は、悪寒とともに高熱が出て。腰や脇腹、背中などに鈍痛が起こります。
吐き気や嘔吐をもよおし、排尿時の痛みや頻尿、血尿などが出ることもあります。

腎盂腎炎の治療
急性の場合は安静にし、尿中の細菌に有効な抗生物質を2週間ほど使用します。そして治療中止後も、少なくとも半年は経過を観察して、再発があれば同様の治療を行なって慢性化を防ぎます。
患者さんは自分の判断で抗生物質を使用したり、注しないことが必要です。その菌に効かない抗生物質を無駄に使用すると副作用が起こり、また完全に治らないうちに服用をやめると慢性化する恐れがあります。

慢性の場合は、病気を治すよりも、むしろ進行をとめることが主で、急性症状がみられれば、尿の細菌にあった抗生物質をかなり長期間使用すことになります。

ループス腎炎とは?

膠原病の一種で、全身に炎症が起こるエリテマトーデス(SLE)という病気でできる抗原抗体の複合物が腎臓の糸球体に沈着して、炎症を起こすのがループス腎炎です。全身性エリテマトーデスの患者の約90%以上が罹るとされています。

微熱や倦怠感が現れます

20歳代の女性(とくに母系家族)に多発します。遺伝的要因に紫外線、食べ物、化粧品、金属などの環境因子が引き金となって発症します。

ループス腎炎の症状
微熱や倦怠感などの全身性エリテマトーデスにみられる症状のほか、タンパク尿、血尿、むくみなどが現れます。症状がひどい場合は、ネフローゼ症候群を示すこともあります。腎機能が低下する場合もあります。

ループス腎炎の治療
副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤を使用する薬物療法をします。腎不全まで進行すると透析療法を行う必要があります。

過活動膀胱とは?

2002年の国際尿禁制学会(ICS)で認められた新しい疾患名です。膀胱が脳からの指令を待たずに収縮して、強い尿意を引き起こします。原因となる病気には、脳血管障害や脊髄損傷による神経因性膀胱前立腺肥大などもありますが、原因疾患がないのに起こる突発性の過活動膀胱も少なくありません。

我慢できない強い尿意が特徴です
  1. 尿意を突然もよおして、我慢が難しいことがある。
  2. 尿をする回数が多い。
  3. 我慢ができずに失禁してしまうことがある。

1があてはまる場合は、過活動膀胱の疑いがあります。2と3の項目も該当する場合は、さらにその可能性は高くなりますので、泌尿器科もしくは尿失禁外来を設けている婦人科を受診しましょう。

過活動膀胱の症状
健康な人の場合、400〜500mlの尿がたまるとトイレにいきたくなるのですが、過活動膀胱では、100ml前後の尿がたまると強い尿意をもよおし、我慢できずに失禁してしまうことが日常的に起こります。また、頻尿になり、予感の就寝中でも失禁することがあります。

過活動膀胱の治療
自律神経に作用して、膀胱の過度の収縮を抑える抗コリン薬での薬物療法が中心となります。副作用として口が渇く、尿が出にくくなる、便秘、発汗などがみられる場合があります。

神経因性膀胱とは?

大脳などの中枢神経から膀胱の末梢神経に至るまでで膀胱と尿道を支配する全ての神経系の疾患(脳梗塞、脊髄損傷、糖尿病性神経障害など)によって起こる膀胱と尿道の機能障害のことです。
夜間頻尿などで見られる精神的な要因によって起こる心因性膀胱とは区別します。ただし両者の症状は欲に低いることがあり、併発していることが少なくありません。

薬で症状が部分的に良くなっても治ることは少ない

神経因性膀胱の症状
排尿困難、頻尿、失禁などの排尿に関わる多彩な症状を示しますが、特に頻尿は女性に多くなっています。

神経因性膀胱の検査と診断
基本的には排尿機能に関与する中枢神経から膀胱の末梢神経について検査を行うことになりますが、これは煩雑であり高齢者に負担をかけることになるので、症状にあわせて頭部のCT、脊椎のMRI、糖尿病の有無の検査、検尿などを組み合わせて診断を行います。

神経因性膀胱の治療
原因となる疾患の治療を行うことはもちろん、原因は複合的なことがあり、薬を中心とした対症療法的な治療を行います。抗不安剤、睡眠導入剤などの向精神薬を併用することもあります。

この病気は治しにくい例が少なくありません。脳梗塞での排尿のコントロールが出来にくくなり残尿や失禁が起こりますが、薬で症状が部分的によくなることはあっても治ることは少なく、定期的に、時間を掛けて排尿するなど生活面での工夫が必要となります。

また女性高齢者で夜間に限り頻尿ということがあります。精神的な要因も絡んでおり、夕方以降は水分の摂取を少なくし、睡眠が十分取れるように場合によっては睡眠導入剤を使います。

脊髄損傷による場合は、尿意もないため排尿を自らコントロールできませんので、定期的な導尿を行います。

膀胱炎とは?

膀胱炎とは、大腸菌などの細菌が尿道から膀胱に入り込み、炎症を起こす病気です。
男性に比べて尿道の短い女性に多く発症し、月経後や排尿を我慢したときに起こりがちです。過労や風邪、生理、妊娠などで抵抗力が落ちている場合も感染を誘発します。
男性の場合は前立腺炎が原因となることが多いです。

膀胱炎は女性に多く発症します

膀胱炎の症状
頻尿、排尿時の痛みと灼熱感、尿の濁りが代表的な症状です。急性の場合は症状の現れ方がきわめてはっきりしているのに対し、慢性の場合は症状が軽く、その進み方も遅いのが特徴です。
また、発熱を起こす場合がありますが、そのほとんどは微熱で、高熱が出るのは腎盂腎炎を併発していると考えられます。
女性の慢性膀胱炎で多い尿道膀胱炎では、尿がにごることはほとんどなく、頻尿や排尿時の痛みが長時間続きます。

膀胱炎の治療
治療には原因菌に有効な抗生物質を用います。膀胱炎だけなら抗生物質の服用で数日中に治ります。症状が長引く場合は、他の病気が隠れていることがあります。発熱をともなうときは腎盂腎炎の合併が疑われます。そのような場合には再受診する必要があります。

多量の水分を摂取することが膀胱炎の予防に役立ちます。尿が勢いよく流れることにより、多くの細菌が膀胱から押し出されます。残りの菌は体の自然の防衛機能によって取り除かれます。

膀胱がんとは?

尿路の悪性腫瘍の中で最も発生率の高いのが膀胱がんです。40歳以上に多く、3:1の割合で、女性よりも男性に多く見られます。膀胱がんのうち、その90%以上が膀胱の内側の粘膜に発生します。
粘膜以外の腫瘍には、悪性の肉腫と良性の線維腫などがあります。再発率が高い病気で、転移すれば生命の危機も生じます。

Bladderは膀胱、Tumorは腫瘍です

膀胱がんがなぜできるのか、詳しくは不明ですが、喫煙との因果関係が注目されています。
膀胱がんの30〜50%の人は喫煙習慣があるといわれ、喫煙習慣のない人の4倍の発生率といわれています。また、特別な化学薬品を扱う人の膀胱にがんができることがあります。

膀胱がんの症状
ほかになんの症状もともなわない血尿がみられます。突然、原因もなく血尿が出て、数日から1〜2週間で急に尿が透明になることが多く、これが数ヶ月の感覚で繰り返して起こります。

また、膀胱炎を併発することがよくあります。腫瘍が膀胱頚部付近にできる場合は、それによって内尿道がふさがれてしまうために、排尿の中断などの排尿異常が起こります。頻尿、排尿痛のある人もいます。

膀胱がんの診断
膀胱鏡を使って腫瘍の一部を採取して生検を行なって確定診断を下します。
最近は、血尿のスクリーニング検査として超音波診断により膀胱がんが発見されることもあります。また、尿中にがん細胞を認める場合があり、尿の細胞診といって、無症候性血尿の精密検査として必ず行なわれる検査です。
さらに、転移の有無などがんの進行の具合を調べるには、CTスキャン、MRI、骨シンチなどの放射線科の検査が必要となります。

膀胱がんの治療
治療の方法は、腫瘍の進行状態によって異なります。腫瘍の早期発見、完全除去が大切です。
良性の乳頭腫や小さいがんの場合は、尿道から内視鏡を挿入して、電気で切除する経尿道的切除術(TUR)を行ないます。少し大きい腫瘍の場合は、腫瘍とともに膀胱壁を外科的に切除しますが、最近ではほとんどTURで処置します。

非常に大きい場合は、膀胱の全摘出手術が必要となり、その際は新しい尿路を作ることになります。尿を尿道以外から体外に出す方法を尿路変更術といい、この方法には数種類ありますが、状況によってよいものを選択します。

手術が不可能と判断された場合は、放射線治療、抗がん剤などの治療を行ないます。
膀胱がんは再発しやすいがんですので、手術後も最低、半年に一回は膀胱内を検査する必要があります。

腎結石・尿管結石とは?

尿が腎臓でつくられて腎盂、尿管、膀胱、尿道と流れて体外に排出される際に、このいずれかの場所に結石ができるために起こります。結石は、尿中のカルシウム、リン、尿酸などの物質が結晶化して固まったものです。

腎結石

ほとんどは水分のとり方が不十分なために起こります。とくに夏に汗をたくさんかき、尿量が少なくなると起こりやすくなります。ただ、再発を繰り返す場合は、尿のうっ滞、代謝異常、副甲状腺機能亢進症、高カルシウム尿症、慢性の尿路感染症の存在などを疑う必要があります。また、高尿酸血症があると、尿管結石ができやすくなります。

腎結石・尿管結石の症状
腰痛や側腹部痛、血尿、結石の排出があります。痛みは横腹から下腹部にかけて起こり、この痛みは背側部から肩甲骨の方向に走ったり、横腹から下腹部、さらに外陰部に向かって走ります。
鈍痛だけのこともありますが、強い痛み(疝痛)の発作が起こることも少なくありません。疝痛発作のときには冷や汗、吐き気、嘔吐をともなうこともあります。

結石が下降して膀胱に近づくと、膀胱を刺激して頻尿や残尿感、ときには排尿痛などの症状が現れます。尿は血尿になりますが、肉眼でわかるものから顕微鏡検査でわかる程度のものまでさまざまです。
ときには尿に小さい結石を認めることがあります。疝痛発作は、結石により尿が流れないために起こるので、尿管結石の場合に痛みの発作が繰り返し起こり、大きな腎結石では鈍痛のことが多いものです。

尿管に長い間結石がとどまっていると腎盂や尿管が腫れて大きくなり、水腎症や水尿管症になります。細菌の感染が起こると急性腎盂(腎)炎が起こり、高熱が出ます。
このようなときに有効な抗生物質を用いないと、炎症を消失させることができず、進行して膿腎症になることもあるので、十分に注意する必要があります。

腎結石・尿管結石の治療
小さい結石(5mm以下)は尿とともに体外に排出される可能性が高いのですが、尿管を下降するときに発作的な痛みが起こります。そこで、鎮痛薬によって痛みを抑えながら、水分を多量にとって結石の排出を促します。

結石が大きくて尿管から膀胱に降下しない場合や、サンゴ状結石ができて結石が腎盂全体を埋めているときは、体外から衝撃波を与えて、結石を破壊して尿とともに出す体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や、内視鏡を使って結石を摘出する体内砕石術(経尿道的尿管砕石術)があります。

術後はその結石の成分を分析してもらい、それにより薬などを用いるとよいでしょう。
結石を形成しないようにするには、偏食を避けて、水分を十分に摂取することが大切です。

尿道炎とは?

尿道炎とは、性交によって細菌が尿道に感染して、炎症が起こる病気です。
昔は尿道炎といえば、いわゆる「淋病」である「淋菌性尿道炎」がほとんどでしたが、最近は淋菌以外の細菌による「非淋菌性尿道炎」が増えています。

排尿時に痛みや尿道の灼熱感が現れます

尿道炎の原因
各種の細菌や淋菌、クラミジアなどの微生物が尿道に感染して起こります。クラミジアが原因の場合は症状が軽く、気付かないままに慢性化することもあります。
クラミジア以外の病原微生物としては、最近マイコプラズマ・ゲニタリウムが注目されており、これはクラミジアを除いた非淋菌性尿道炎における原因微生物の25%を占めると考えられています。

尿道炎の症状
外尿道口、すなわち尿の出口から異常な分泌物が出ます。この分泌物は黄色い膿のこともあり、透明な液のこともあります。尿道にかゆみを感じたり、痛みを覚えることもあります。また、尿が近くなったり、尿が出きらない感じ(残尿感)を覚えることもあります。

尿道炎の治療
抗菌薬の内服が有効です。淋菌感染の場合は、内服薬では殺菌できない耐菌性が多いため、注射治療が必要になることもあります。クラミジアに対してはテトラサイクリン系薬、マクロライド系薬、およびニューキノロン系薬が用いられます。
尿道炎は上記の症状が消えても治っていないことがよくあります。服薬後に尿検査で確認することが重要です。

尿道狭窄とは?

尿道狭窄とは、先天性のほか、尿道炎や尿道外傷などの後遺症で尿道の内腔が狭くなる病気です。放置していると残尿が増えて水腎症や腎機能の低下に進行する場合があります。
女性より尿道が長い男性によくみられます。

尿道狭窄

尿道狭窄の症状
尿道が狭くなっているので、排尿に時間がかかるようになります。また、尿に勢いがなくなります。また、ひどくなると尿が出なくなったり濁ったりもします。
症状が前立腺肥大症と似ているので間違えやすいのですが、尿路狭窄の場合は物理的に尿道を拡張する治療が必要になります。

尿道狭窄の治療
軽い場合は、ブジーという金属製の管を尿道口から入れて尿道を広げます。
重症の場合は内視鏡を使って切開したり、手術によって狭窄部を切除して尿道をつなぐなどの処置が必要となります。

膀胱尿管逆流とは?

膀胱の尿はふつうは逆流を防止する機構があるので逆流しませんが、機能が障害を起こすと尿が尿管や腎盂に逆流してしまいます。この現象を膀胱尿管逆流といいます。

発熱や腰痛、尿の混濁が現れます

膀胱尿管逆流の原因
最も多い原因は、尿管の走行を維持する平滑筋が弱く、膀胱内の尿管が通常の長さに発達できなかったためで、これは先天的なものです。
後天的なものは、前立腺肥大症、神経因性膀胱症が原因となる場合もあります。

膀胱尿管逆流の症状
この病気自体の症状はありませんが、膀胱に細菌が感染すると膀胱炎から腎盂腎炎を発症し、発熱や腰痛、尿の混濁、排尿時の痛みなどを生じてきます。

膀胱尿管逆流の診断
検査は超音波・CT検査、静脈性腎盂造影を行い、最終的には膀胱造影を行います。
膀胱内に造影剤を注入して、臥位・立位・排尿時にX線透視下で、逆流のタイミングを観察しながら撮影します。この際に尿路感染がある場合には、抗菌薬で十分治療してから検査します(腎盂腎炎を併発するおそれがあるため)。可能であれば、膀胱鏡による膀胱三角部・尿管口の観察を行います。

膀胱尿管逆流の治療
先天的なものは成長とともに治ることがありますので、経過観察が必要です。
治らない場合は逆流防止手術を行ないます。手術方法にはいろいろありますが、尿管を膀胱粘膜下にはわせる粘膜下トンネルを作成して逆流を防止することが基本になります。