ホルモン、代謝の病気のリスト

ホルモンは、体温や血液などの体内環境を常に一定の状態に保つ役目をします。また、活動のエネルギーを維持したり、体の成長、成熟、生殖のためにはたらきます。
ホルモンを分泌する器官は、視床下部、下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎皮質、副腎髄質、性腺、膵臓があります。

ホルモン、代謝の病気について

甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態を甲状腺機能亢進症といい、代表的な病気がバセドウ病です。逆に、血液中の甲状腺ホルモンが減少した状態を甲状腺機能低下症といいます。ほとんどは慢性甲状腺炎が原因で起こります。
ほかに、副腎皮質ホルモンの分泌に異常がみられるクッシング症候群などがあります。

ホルモンには代謝のシステムに深くかかわっています。例えば糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの働きが低下することで、糖の代謝異常が引き起こされる病気です。

  • 生活習慣病…日常の生活習慣が発症に及ぼす影響が大きい病気の総称です。
  • メタボリックシンドローム…内臓の周囲に脂肪が溜まる内臓脂肪型肥満が原因です。
  • 肥満症…健康障害を合併し、体重を減らす必要がある場合を、肥満症といいます。
  • 糖尿病…インスリン不足で高血糖が続き、糖が尿に混じって排出される病気です。
  • 高脂血症…血中コレステロールや中性脂肪などの脂質が、異常に多い状態をいいます。
  • 高尿酸血症…体内での尿酸の産生が多くなり、腎臓からの排泄が低下する状態です。
  • 低カルシウム血症…血液中のカルシウム濃度が8.5mg/dl以下という低下した状態です。
  • 高カルシウム血症…血液中のカルシウム濃度が10.5mg/dl以上という高い状態です。
  • 低カリウム血症…腎臓からのカリウム排泄量が増えて体外に多く出て、発症します。
  • 高カリウム血症…カリウム排出を阻害する作用のある薬を使用すると、発症します。
  • 尿崩症…抗利尿ホルモンの分泌が不足して、水分が尿として体外に出て行く病気です。
  • 甲状腺機能低下症…甲状腺ホルモンの分泌能力が低下する病気の総称です。
  • 甲状腺機能亢進症…甲状腺ホルモンの分泌が、多くなすりすぎたために起こる病気です。
  • 副甲状腺機能亢進症…血液中のカルシウム濃度が高くなってしまう病気です。
  • 慢性甲状腺炎…甲状腺に対する自己抗体が生まれることで、障害が起こる病気です。
  • 甲状腺腫瘍…甲状腺にできる腫瘍(腫瘤・腺腫)を総称して、甲状腺腫瘍といいます。
  • 褐色細胞腫…副腎髄質からカテコールアミンが過剰に分泌され、高血圧になる病気です。
  • アジソン病…副腎皮質ホルモンの分泌低下が慢性的に起こる病気です。
  • クッシング症候群…ムーンフェイスといって、顔に脂肪が付いてまん丸になります。

生活習慣病とは?

日常の生活習慣が発症に及ぼす影響が大きい病気の総称です。
具体的には、2型糖尿病肥満症高血圧高脂血症高尿酸血症、虚血性心疾患(狭心症など)、脳血管障害(脳卒中)、大腸がん骨粗鬆症などが含まれ、影響を及ぼす生活習慣因子として、食事、運動、休養、喫煙、飲酒、ストレスなどがあげられます。

定期的に健康診断が大切です

生活習慣病は、不健康な生活習慣を続けるうちに、ゆっくりと進行していくのが特徴です。そのため多くは中年以降に発症します。
例えば、塩分の多い食事を続けていると高血圧になり、脳卒中や狭心症、心筋梗塞のリスクを高めます。また、過度の飲酒を続けていると高尿酸血症になりがちで、痛風、さらに腎機能障害へと進行していく可能性があります。

生活習慣病の特徴は、症状が相当悪化するまで自覚症状が現れないことです。
自覚症状が出たときは、完治させるのは困難という場合もあります。そのため、定期的に健康診断を受け、健康状態を把握しておくことが大切です。

メタボリックシンドロームとは?

内臓脂肪蓄積型肥満に、高血糖・高血圧・高脂血症の3つの生活習慣病のうち2つ以上を合併した状態を「メタボリックシンドローム」と呼びます。これらの要素は、それぞれが治療の必要がない軽症でも、複数が合併すると動脈硬化が加速され、心筋梗塞脳梗塞のリスクが高まってきます。

内臓脂肪型肥満が原因です

メタボリックシンドロームの診断基準は、ウエスト周囲径が男性85cm以上/女性90cm以上で、かつ下記のA・B・Cのうちの2項目を満たすときです。

  • A.脂質異常…中性脂肪150mg/dl以上あるいはHDLコレステロール40mg/dl未満
  • B.血圧異常…最高血圧130mmHg以上あるいは最低血圧85mmHg以上
  • C.糖代謝異常…空腹時血糖110mg/dl以上

メタボリックシンドロームの原因
内臓の周囲に脂肪が溜まる内臓脂肪型肥満が原因です。食生活の欧米化により、高脂肪・高カロリーの食事が多くなりがちです。さらに、お酒の飲みすぎ、運動不足、生活リズムの乱れも重なると、脂肪がどんどんたまっていきます。

内臓脂肪の脂肪細胞からは、インシュリンの働きを悪くさせたり、動脈硬化を悪化させる物質が分泌されます。また、動脈硬化を予防するアディポネクチンの分泌が抑制するので、動脈硬化が進みやすくなります。

メタボリックシンドロームの改善
治療薬はありませんので、生活習慣を改善し内臓脂肪を減らして、メタボリックシンドロームの状態から抜け出すしかありません。まず、高エネルギー、高脂肪の食事を控えて、栄養バランスの取れた食生活を心がけます。

また、適度な運動は、インシュリンの働きを良くして血糖値を下げるので、1回30分以上のスポーツ(ジョギングなどの有酸素運動がベスト)を週2回以上するようにしましょう。
内臓脂肪は、皮下脂肪より減りやすく、食事療法、運動療法の効果は比較的早くからあらわれます。

肥満症とは?

肥満は消費するエネルギー以上のエネルギーを、毎日、長期にわたって摂取し続けることによって起こります。つまり、食べすぎが長い間続き、また運動量が減少することが原因です。
肥満の状態にあって、それに起因または関連して健康障害を合併しており、医学的に体重を減らす必要があると判断される場合を、肥満症といいます。

食事療法と運動療法による治療が必要です

肥満の大部分は、余分なエネルギーが脂肪として蓄積される単純性肥満で、ホルモンの異常が原因でわかっているのは、副腎皮質ホルモンの過剰分泌によるクッシング症候群が主なものです。

肥満症の症状
肥満そのものは腰痛や膝関節痛などをおこすくらいですが、問題なのは肥満が原因となって起こる合併症です。心臓病、高血圧症糖尿病高脂血症などの循環器系の異常や代謝異常、睡眠時無呼吸症候群がおきやすくなります。

肥満症の治療
単純性肥満の場合は、食事療法と運動療法を行います。食事は、摂取エネルギー量を抑え、タンパク質やビタミンなどが不足しないように、栄養バランスのよいものをとります。
同時に、速歩などの有酸素運動を1日30分程度、毎日続けるようにして内臓脂肪を燃焼させます。

糖尿病とは?

人体は栄養素の一つである糖質を体内でブドウ糖に変えて腸で血液に溶け込ませて、血糖として細胞に運んでいます。この血糖が脳や筋肉などいろいろな細胞で使われるエネルギー源となるには、膵臓のインスリンと呼ばれるホルモンの助けが必要です。

糖尿病について

インスリン不足が慢性化すると血糖がエネルギーとして利用されず、血液中に停滞して血糖の濃度が高くなってしまいます。高血糖が続くと糖が尿に混じって排出されるようになります。これが糖尿病です。

糖尿病は大きく分けて、治療にインスリンの注射が欠かせない「1型」、必ずしもインスリンの補充を必要としない「2型」に分類されます。日本人の糖尿病の約90%は2型です。

糖尿病の原因
1型は、免疫反応に重要な役割をする白血球の中のリンパ球が、自己抗体をつくって膵臓のβ細胞を破壊する自己免疫異常などが原因で起こります。インスリンがほとんど分泌されない状態です。

2型は、糖尿病の遺伝因子を持つ人にカロリーの多い食生活、運動不足、肥満、ストレスなどの生活習慣因子や加齢が引き金になって発症するといわれています。

糖尿病の症状
初期には自覚症状は現れませんが、病状が進むと、のどの渇き、多尿、倦怠感、体重減少などの症状がみられるようになります。この病気が進行すると、細小血管がおかされ、糖尿病網膜症糖尿病腎症、糖尿病神経障害などの合併症が現れます。

また、メタボリックシンドロームと呼ばれる病態に加え、喫煙などの多くの危険因子が重なっていると、動脈硬化を基盤とした大血管障害を合併し、脳梗塞心筋梗塞など、生命にかかわる病気を引き起こします。

糖尿病の治療
食事療法と運動療法基本です。ほかに薬物療法やインスリン療法を行います。

高脂血症とは?

血液中にあるコレステロールや中性脂肪(トリグリセリド)などの脂質が、異常に多い状態をいいます。高脂血症のうち特に問題になるのは、高コレステロール血症、高中性脂肪(トリグリセリド)血症の二つで、両者が合併している場合もあります。
自覚症状がないために、健康診断などを除いては発見しにくく、放置していると狭心症心筋梗塞脳梗塞などを引き起こします。

狭心症や心筋梗塞、脳卒中の原因となります

高コレステロール血症
血液中のコレステロールが220mg/dl以上を超えると、高コレステロール血症といわれ、治療が必要とされます。コレステロールを大別すると、HDL(善玉コレステロール)、LDL(悪玉コレステロール)とがあり、HDLが多い場合にはむしろ好ましいとされています。

コレステロールというのは、細胞膜やホルモンの材料となり、身体にとって必要不可欠物です。コレステロールはリポタンパクというカプセルに詰められて血液中を運ばれていくのですが、身体の各部分へ配達するのがLDLであり、余分なコレステロールを回収するのがHDLです。

したがって、LDLが多すぎれば、血管壁に残されるコレステロールが増え、HDLが多ければそれを回収するコレステロールが増えて、血管壁がきれいになります。

コレステロール値が高くても、症状はほとんどありません。ですので、知らないうちにコレステロールが血管壁にたまって動脈硬化を進め、狭心症や心筋梗塞、脳卒中などを引き起こすことになるのです。

高中性脂肪(トリグリセリド)血症
血液中の中性脂肪が150mg/dlを超えたものをいいます。症状はありませんが、中性脂肪が増えすぎると、動脈硬化を促進するほか、糖尿病高血圧脂肪肝肥満高尿酸血症(痛風)、膵炎などの病気に悪影響を及ぼします。

高脂血症の原因と治療
華燭、糖分の多い食品の過剰摂取、運動不足が原因です。体質の遺伝もあり、先天的に起こる高脂血症の一つに「家族性高コレステロール血症」があります。腎臓病、糖尿病、肥満症などが原因の場合は、それらの病気を治療します。
糖尿病の食事療法、運動療法を参考に、糖尿病治療中の人と同様の生活を心がけてください。

高尿酸血症とは?

体内での尿酸の産生が多くなり、腎臓からの排泄が低下して体内にある尿酸が多くなる状態が高尿酸血症で、この尿酸が関節に蓄積して炎症を起こすのが痛風です。

足の親指の激痛が痛風の特徴です

高尿酸血症の症状
通常症状はありませんが、腎臓や脳血管、心臓に影響します。尿酸値が9mg/dl以上になると、痛風発作が起こりやすくなります。痛風発作とは、長年関節に蓄積してきた尿酸結晶がなだれを起こし、主に足の親指の関節や膝関節に突然の激痛が出ることをいいます。風が当たっただけでも激痛が走ることから、「痛風」と呼ばれるようになりました。

女性の場合、女性ホルモンの作用により高尿酸血症は起こりにくく、痛風発作は男性が99%を占めています。

高尿酸血症の治療
基本は食事療法です。尿がアルカリ性(尿pH値が7以上)になると、尿酸結晶は溶けやすくなります。そこで、尿をアルカリ化する食品をとり入れて、逆に酸性化する食品は避けるようにします。
尿酸の原料となるプリン体(細胞の核に含まれるDNAの主成分)を多く含むレバーやビールなども控えましょう。

また、水分はたくさんとって尿量を増やし、尿酸を出来るだけ尿から排泄するようにします。それでも尿酸値が下がらない場合は尿酸の産生を抑える薬や排泄をよくする薬を服用します。
痛風に対しては、炎症を起こしている関節部に冷湿布をし、奨炎鎮痛剤を服用します。

低カルシウム血症とは?

血液中のカルシウム濃度が8.5mg/dl以下という著しく低下した状態を低カルシウム血症といいます。体内のカルシウムは骨に蓄えられており、必要に応じて血液中に供給されますが、尿に出てしまうカルシウムの量が多すぎるたり、カルシウムが骨から血液中へ移動しなくなってしまうと、血中濃度は低下してしまいます。
原因となる病気は、ネフローゼ症候群慢性腎不全、副甲状腺機能低下症、ビタミンD欠乏症、低マグネシウム血症、一部の悪性腫瘍などがあります。

手足のしびれなどの症状が現れます

低カルシウム血症の症状
カルシウムは骨や歯の形成に欠かせないことは有名ですが、そのほかにも筋肉の収縮、心臓の洞調律の維持、血液行にも重要な役割を果たしています。
カルシウムの不足状態が続くと中枢神経に影響がおよび、手足のしびれや錯乱、意識混濁、けいれん、低血圧症不整脈などが起こります。また、手指が自由に動かせなくなるテタニー発作を起こす場合もあります。

低カルシウム血症の治療
急性の低カルシウム血症の場合は、カルシウムの注射療法を行ない、慢性の場合は、カルシウム剤やビタミンD剤など飲み薬で治療します。原因疾患がある場合は、その治療を行ないます。

関連疾患:高カルシウム血症とは?

高カルシウム血症とは?

血液中のカルシウム濃度が10.5mg/dl以上という著しく高い状態にある場合を高カルシウム血症といいます。副甲状腺ホルモンが多量に分泌される副甲状腺機能亢進症やビタミンA、Dの過剰摂取、あるいは悪性腫瘍をともなって血液中のカルシウム濃度が上昇しておきます。
骨粗鬆症の治療で活性型ビタミンD製剤を投与した場合にもおこることもあります。

血中のカルシウム濃度が高い状態です

高カルシウム血症の症状
軽度の場合は、便秘、吐き気、嘔吐、腹痛、食欲減退、脱水症状、多尿などがみられます。重度の場合は、意識混濁、昏睡をともなう脳の機能障害を引き起こします。
骨軟化症、腎不全、不整脈、ときには高血圧症をともなう場合もあります。慢性高カルシウム血症では、カルシウムを含んだ腎結石が形成されることがあります。

高カルシウム血症の治療
原因となる疾患の治療を行ないます。カルシウム濃度を下げるには、副腎皮質ステロイド薬、利尿薬、骨吸収抑制薬などを用います。腎機能が正常な状態ならば、多量の水分を摂取することにより、腎臓を刺激してカルシウムを排出させ、脱水症状を防止することができます。

関連疾患:低カルシウム血症

低カリウム血症とは?

体内のカリウムの98%は細胞の中にあり、血液中のカリウムはほんのわずかにすぎませんが、細胞の働きを調節するうえでとても重要です。この血液中のカリウム濃度が低下するのが低カリウム血症です。

不整脈の症状が現れます

主な原因は腎臓からのカリウム排泄量が増えて体外に多く出てしまうことですが、カリウム摂取量が減ったり、嘔吐や下痢で消化液を失ったり、腎臓病や利尿剤使用などでも尿へのカリウム排出が増えて低カリウム血症が起こります。
何らかの原因で血液がアルカリ性に傾くことや、血糖を下げるインスリンが血液中に増えることなども原因になります。また、クッシング症候群、悪性高血圧、慢性腎炎などでも起きます。

低カリウム血症の症状
筋肉の力が落ち、全身の倦怠感が現れます。腎臓が尿を濃縮する作用も阻害され、薄い尿で頻尿となってしまいます。重症の場合は呼吸筋麻痺、不整脈腸閉塞などに至ります。悪化すれば生命にかかわります。

低カリウム血症の治療
原因となっている疾患の治療を優先します。対症療法として塩化カリウムの補給も行われます。カリウムを多く含む食品をとり、さらに経口カリウム製剤の内服が加えられます。
重い低カリウム血症や経口摂取が不可能な場合には点滴により補充されます。

関連疾患:高カリウム血症

高カリウム血症とは?

血液中のカリウム濃度が異常に上昇した状態です。腎臓でのカリウム排出を阻害する作用のある薬を使用するとカリウム排出機能が低下して発症します。
また、広範囲の火傷やケガで筋肉組織が破壊されると、細胞中のカリウムが大量放出される原因になります。副腎からアルドステロンというホルモンが分泌されなくなるアジソン病や消化管出血なども原因となります。

不整脈がみられます

高カリウム血症の症状
筋力の低下、嘔吐などの胃腸症状、知覚過敏、不整脈などの心臓の拍動の異常が起こります。血清カリウム値が7〜8mEq/lを超え、症状が重くなると危険な不整脈のために心臓停止が起きて生命にかかわります。

高カリウム血症の治療
軽度の場合はカリウムの摂取量を減らしたり、原因となる薬の使用を中止すれば改善します。重度の場合は、カリウムを吸収し便や尿とともに体外へ排泄する作用のある薬を用います。
緊急に治療が必要なときは、グルコン酸カルシウム(カルチコール)で不整脈を予防したり、重曹を投与して酸性に傾いた血液を中和します。

関連疾患:低カリウム血症

尿崩症とは?

内分泌をつかさどる下垂体は、抗利尿ホルモンが分泌され、腎臓に働きかけて、尿として排泄される水の量を調節しています。抗利尿ホルモンが働くと、腎臓で水が再吸収され、体内の水分が低下しすぎるのを防ぐ仕組みになっているのですが、このホルモンの分泌が低下して、体内の水分が必要以上に排泄されてしまうのが、尿崩症です。

抗利尿ホルモンの分泌が不足します

脳腫瘍や松果体腫、頭蓋咽頭腫などにより、下垂体へ信号を送る神経の経路に障害をきたすことがあり、頭部の外傷や手術によって同様の障害が生じることがあります。また、妊娠や分娩に伴うホルモン異常が原因になることもあります。

尿崩症の症状
尿の回数と量が増え、体内の水分が不足するので喉が渇き、水をたくさん飲みます。
通常の尿量は1.5リットル以下ですが、尿崩症になると3リットル以上に達します。皮膚や粘膜の乾燥、全身の倦怠感、食欲不振もみられます。

また、抗利尿ホルモンが正常に分泌されていても、それに反応する腎臓に障害があると、ホルモンを正常に受け取れなくなり、これらの症状が現れる場合もあります(腎性尿崩症)。

尿崩症の治療
脳内の病変による場合は、原疾患の治療が重要です。多尿の治療には抗利尿ホルモン製剤の酢酸デスモプレシンを鼻から吸収させます。そのほか、注射製剤も使用できます。
腎性尿崩症では、脱水症状を予防するために、喉が乾いたらすぐに水を飲むようにします。非ステロイド系抗炎症薬は、尿量を減らす効果がある場合もあります。

甲状腺機能低下症とは?

甲状腺機能低下症とは、甲状腺ホルモンの分泌能力が低下する病気の総称です。代表的なものに、慢性甲状腺炎(橋本病)があります。また、下垂体の異常で甲状腺刺激ホルモンが分泌されなかったり、視床下部の以上で甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンが分泌されないために発症することもあります。
なお、甲状腺ホルモンが逆に分泌されすぎるために起こる病気は、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)といいます。

甲状腺ホルモンの分泌能力が低下する病気です

甲状腺機能低下症の症状
甲状腺ホルモンの分泌が低下している程度では、目立つ症状はありません。しかし、甲状腺ホルモンが不足してくると物忘れや無気力、寒がり、発汗の低下、居眠り、皮膚のかさつき、眉毛も髪も薄くなるなどの症状が現れてきます。

さらに症状がひどくなると、顔や下肢全体がむくんだようになります(粘液水腫)。
日常の動作も鈍くなり、言葉もゆっくり、1日中のんびりしていることが多くなります。また極端に甲状腺ホルモンが不足した状態になると、昏睡に陥ることも少なくありません。

甲状腺機能低下症の診断と治療
血液中の甲状腺ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの測定、血中コレステロールの増加もみます。
治療では、甲状腺から分泌されるホルモンのサイロキシンを少量から投与しします。
乾燥甲状腺末(チラージン末)を投与することもあります。甲状腺ホルモンを内服し、甲状腺機能が正常化すれば、症状は全て消失しますが、ホルモンは継続して内服する必要があります。

なお、海草類(昆布、ワカメ、海苔、ヒジキなど)には甲状腺ホルモンの原料となるヨードが豊富に含まれていますが、慢性甲状腺炎の人の一部には、このヨードを摂り過ぎると甲状腺ホルモンが作れなくなり、逆に甲状腺機能低下症になる場合がありますので注意が必要です。

慢性甲状腺炎(橋本病)とは?

慢性甲状腺炎とは、甲状腺に対する自己抗体が生まれることで、甲状腺組織に障害が起こる病気です。障害がひどくなると、甲状腺の細胞が破壊されてしまい、甲状腺機能が低下してしまいます。
最初に症例を報告した橋本博士の名前をとって「橋本病」ともいいます。
思春期すぎから閉経後まで幅広い年代にみられますが、60%以上は30〜50歳までの人です。更年期障害と間違えられることもあります。

橋本病

慢性甲状腺炎(橋本病)の症状
中年の女性に多い病気で、甲状腺がかたく腫れて、触れると凹凸を感じます。
体温が低くなったり、皮膚がカサカサになる、脈拍数が減るなどの症状もみられます。
さらに甲状腺ホルモンの分泌が減ると、寒がり、便秘、声がかれる、ゆっくりした話し方になります。

さらに甲状腺の機能が低下すると、顔がむくんだり、月経の異常(月経不順、無月経過多月経)が現れます。コレステロール値が上がり、肝臓の酵素の値も上昇するので、肝炎と間違えられることもあります。

慢性甲状腺炎(橋本病)の診断
甲状腺組織を顕微鏡で見ないと確定診断はできませんが、通常は抗甲状腺抗体が陽性で、硬い甲状腺腫が認められ、バセドウ病が否定できれば慢性甲状腺炎と考えて経過をみることになります。

慢性甲状腺炎(橋本病)の治療
甲状腺の腫れが認められても、機能に異常が無いと判断された場合は、定期的な検査だけで治療の必要はありません。甲状腺ホルモンの不足が生じた場合は、甲状腺ホルモン補充療法を行ないます。
また、ひじきや昆布などの海藻に多く含まれているヨードは甲状腺ホルモンの放出を抑制する作用があるので、過剰摂取しないようにします。

甲状腺腫瘍とは?

甲状腺にできる腫瘍(腫瘤・腺腫)を総称して、甲状腺腫瘍といい、良性と悪性の2つのタイプに分類されます。良性の腫瘍が全体の90%以上を占めており、腺種、嚢胞、腺腫様甲状腺腫などがありますが、甲状腺の機能に異常はありません。

甲状腺悪性腫瘍

一方、悪性腫瘍(甲状腺がん)には乳頭腺がん、濾胞腺がん、髄様がん、未分化がんの4タイプに分けられます。未分化がんに以外は進行が遅く、がんの中では比較的性質のおとなしいものです。
初期には自覚症状がないことがほとんどですが、前頚部にできる腫瘍なので、自分で触って気付くこともあります。声がかれたり、のどに違和感を覚えたりする人もいます。

甲状腺腫瘍の診断
超音波断層検査と腫瘍の細胞を注射器で取って調べる穿刺吸引細胞診という検査で診断されます。悪性腫瘍が疑われた場合は、腫瘍の性質や転移の有無を確認するために、甲状腺のCTやMRI、シンチグラフィーが行われます。

甲状腺腫瘍の治療
良性腫瘍は、経過観察のみで治療の必要はありません。悪性腫瘍は、がんの種類や進行度に応じて、摘出する外科療法、がんを死滅させる放射線療法、がん細胞の増殖を抑えるホルモン療法、抗がん剤を使用する化学療法などのなかから、適切な方法が選択されます。

副甲状腺機能亢進症とは?

副甲状腺は、甲状腺の裏側の4ヶ所に点在している小豆大の臓器です。副甲状腺からは、体内のカルシウム代謝の調節を行なう副甲状腺ホルモン(PTH)が分泌されています。

副甲状腺は4つあります

副甲状腺に腺腫やがんが生じると副甲状腺の活動が活発になって、副甲状腺ホルモンが過剰分泌され、骨からカルシウムが溶け出たり、腎臓でカルシウムの再吸収を促進して、血液中のカルシウム濃度が高くなってしまいます。

副甲状腺機能亢進症の症状
軽い場合は血液中のカルシウム濃度がやや高いだけでそのほかは異常がありません。
腫瘍が大きくなってカルシウム濃度が高くなってくると、排尿回数も量も増えて血液中の水分が減り、のどが渇いて多量の水を飲むようになります。
また、筋力が低下したり、食欲不振、吐き気、便秘などもあらわれることがあります。
悪化すれば、集中力の低下、意識障害などもおきます。

目立った症状が現れない場合でも、副甲状腺ホルモンが骨の吸収を促進するために骨粗鬆症になったり、腎臓へのカルシウムの負荷が高まるために腎結石や尿路結石が起こり、多尿や、場合によっては結石痛が起こります。

副甲状腺機能亢進症の治療
腫瘍が原因の場合は摘出手術を行ないます。副甲状腺は4つあるので、1つを切除しても支障はありません。4つ全部に腫れがある場合は、晴れの最も小さい1つを残し、残り3つを除去します。ほとんどのケースは手術をすれば治ります。

アジソン病とは?

アジソン病とは、副腎結核や自己免疫などのために副腎皮質が破壊され、身体の代謝機能調節に欠かせないコルチゾールやアルドステロン、デヒドロエピアンドロステロンなどの副腎皮質ホルモンの分泌低下が慢性的に起こる病気です。厚生労働省による難病の指定(特定疾患)を受けています。

倦怠感や疲労が現れます

アジソン病の症状
脱力感、疲労、低血圧のほか、食欲低下や腹痛などの症状もみられます。また、皮膚に色素沈着が生じるのが特徴で、日光にあたる顔面や手の甲、摩擦する部分や圧迫される部分に黒ずんだ斑点などが現れます。
自己免疫が関係する特発性アジソン病の場合、甲状腺疾患や糖尿病、貧血、真菌症などを合併することが多く、これらの症状が現れることもあります。

女性では体毛が減少したり、無月経になることもあります。適切な治療を行なわないと症状が悪化し、副腎クリーゼにおちいることもあります。

アジソン病の治療
一度破壊された副腎は再生しません。そこで、不足しているコルチゾールを補うため、コルチゾール作用のある糖質コルチコイドによる補充療法を生涯にわたって続けることになります。
ナトリウムとカリウムの正常な排泄を回復するために、ほとんどの場合でフルドロコルチゾンを毎日服用することも必要になります。
治療は一生続けなければなりませんが、経過の見通しは良好です。

クッシング症候群とは?

クッシング症候群とは、副腎皮質ホルモンのひとつで、血糖上昇作用、タンパク質の合成・分解促進作用、あるいは抗炎症・免疫抑制作用などのはたらきがあるコルチゾールの分泌が慢性的に過剰になる病気です。

過剰になる原因としては、副腎に腫瘍の一種である腺腫ができたり、脳下垂体の腺腫あるいは悪性腫瘍による副腎皮質刺激ホルモンの過剰産生により、副腎皮質刺激ホルモンが過剰分泌されるものがあります。

クッシング症候群の症状
おもな症状としては、ムーンフェイス(満月様顔貌)といって、顔に脂肪が付いてまん丸になります。身体も肥満になっていきますが、手足は細いままで、胸や腹が太ります(中心性肥満)。

筋肉が萎縮して筋力が低下し、骨ももろくなるため、ちょっとしたことで骨折しやすくなります。
また、皮下出血が起こりやすくなり、性欲がなくなります。高血圧糖尿病骨粗鬆症を合併することもあります。

クッシング症候群の治療
重症になりやすいので、治療は早ければ早いほどよい病気です。一般的には、鼻から内視鏡を挿入し、鼻の奥の骨を除去して腫瘍を摘出する手術を行ないます。腫瘍摘出後は、下垂体機能が一時的に低下し、コルチゾールが不足状態になるので、糖質コルチコイドなどで補います。

副腎の腫瘍が原因の場合も、腫瘍の摘出手術を行ない、その後一時的に低下する副腎機能を補うために糖質コルチコイドを服用します。そのほか、放射線治療や副腎皮質ホルモンや副腎皮質刺激ホルモンの抑制剤を使った治療を行なうこともあります。

褐色細胞腫とは?

褐色細胞腫とは、副腎髄質から分泌されるカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)というホルモンが過剰に分泌されるために、高血圧になる病気です。

褐色細胞腫のCT画像

カテコールアミンは血圧、脈拍、血糖をコントロールするホルモンで、それが過剰分泌されると調節機能に障害が現れます。高血圧は持続的な場合もありますが、発作的に上昇する人もいます。発作時に失神することもあるので注意が必要です。

褐色細胞腫の症状
カテコールアミンが多く分泌されることによる高血圧、頭痛、動悸、発汗、顔面蒼白、体重減少、便秘や立ちくらみなどが起きます。胸痛や視力障害がみられるケースもあります。
症状は前屈姿勢をとった時、食事や排便時など腫瘍が圧迫されるような状況に誘発されて発作的に現れる人が半数を占めています。

褐色細胞腫の治療
腫瘍を外科的に摘出します。手術時の血圧の変動は、ときに致命的になるため、手術前からカテコールアミンの作用を阻害する降圧薬などを服用して、血圧を安定させておく必要があります。

褐色細胞腫ががん性ですでに広がっている場合、シクロホスファミド、ビンクリスチン、ダカルバジンによる化学療法により、腫瘍の増殖を遅らせることもあります。腫瘍組織を標的にしたMIBGとして知られる放射性同位元素による治療にも高い効果があります。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)とは?

甲状腺機能亢進症とは、甲状腺ホルモンの分泌が、何らかの原因で多くなすりすぎたために起こる病気で、その大半はバセドウ病と呼ばれるものです。
治療を受けないと、約10%が心不全で死亡しますが、自然に軽くなる人も約25%います。あとは良くも悪くもならないケースです。なお、甲状腺ホルモンの分泌が低下して起こる病気は甲状腺機能低下症といいます。

甲状腺の腫れがみられます

甲状腺機能亢進症の症状
疲れやすい、食欲があるのに体重が増えない、動機、脈が速い、不整脈、手が小刻みに震える、微熱、下痢、生理不順など、さまざまな症状が現れます。
甲状腺は全体に腫れますが、触れてみるとあまり硬くなく、弾力性があります。
一般に甲状腺ホルモンは新陳代謝を活発にするホルモンなので、活動的なわりには疲れやすいのが特徴です。

甲状腺機能亢進症の診断
眼球突出などの症状から容易に診断でき、甲状腺が腫れていれば95%の確率で診断がつきますが、確定診断のためには甲状腺ホルモン検査や甲状腺のRI検査などが必要です。
このほか、胸部X線撮影や心電図、赤血球数などの血液一般検査、GOT・GPT、LDH、総コレステロールなどの血液生化学検査が行なわれます。

甲状腺機能亢進症の治療
甲状腺ホルモンの分泌を抑えるための薬を用います。それでも改善がみられない場合は、放射性ヨードを服用する放射性ヨード療法や手術療法を行ないます。
放射性ヨード療法とは、放射性ヨードを服用すると、その大部分が甲状腺に集まり、甲状腺を破壊するという働きを利用した療法です。手術療法では、甲状腺を部分的に切除します。